- 著者:伊坂 幸太郎
- 『死神の精度』 (文芸春秋)
主人公は「死神」。
寿命や病死以外に“死”を与えるべき人間の、8日後に予定されている運命の日までに、その“死”が「可」であるか「不可」であるかを対象者を調査して決める。
殆どが「可」であるが、何故か「死神」達を惹きつけて止まない人間界の“ミュージック”を聴きたいが為に期限ギリギリまで調査している・・・。
本書の主人公の「死神」は、情報部がくれる不完全な情報を元に、彼なりに真面目に仕事に取り組む、仲間内では少し変った「死神」。
そんんな彼が仕事をする時は必ず雨降りで、晴天を見たことが無い・・・。
その「死神」が取り組む6つの仕事が納められている短編集で、当然どの話も“死”が関わるので少し切ないものばかり。
「死神」自身は人間ではないので、人間と同じような考え方や感情を持っている訳ではなく、人間から見ると変った人に見える。
しかし、その「死神」の取る行動は、妙に人情的なものがある。
そこに読者は割合淡々と進められる話の中に、切なさと暖かさを感じるのかも知れない。
納められた6つの物語は、ロードノベル風だったり恋愛小説風だったり本格推理もの風だったりして、それぞれが独自の色を持つ話で、そのどの物語にも“優しさ”を感じとれる描写がある。
なので全ての話が繋がる最後の物語、「死神対老女」では「死神」の事を人間ではないと気付く老女が「死神」に“あるもの”を見せるシーンでは、何故か胸に熱いものがこみ上げてくるものを感じるほど、切なく、それでいて優しい暖かさを感じた。
読んでいて強い印象を受けるような感じではないのだが、繋がる物語とその物語から受ける優しさから、妙に心に残る・・・伊坂幸太郎のマジックが堪能出来る一冊だ。