- 著者:真保 裕一
- 『ホワイトアウト』 (新潮文庫)
日本最大のダムがテロリストに占拠され、ダムの職員と下流の住民をタテに50億を要求してくる。
難を逃れたダムの職員である富樫は、かつて同じダムの職員である親友と雪山で遭難しかかった登山者を一緒に救助しにいくも、帰り道に不測の事態でその親友の命を失っていた。
たまたまダムの見学にその友人の婚約者が来ていた事から、かつて助けられなかった親友の代わりに、自分の持つダムの知識をもとに富樫は単身救助に向かう!
日本版「ダイ・ハード」とも言われる本書だが、確かにその通りのアクション巨編である。
しかし、そこに描かれているのは、自分のせいで親友を亡くしたと思っている男を動かす激しい情念だ。
親友を亡くし、自責の念にかられていた富樫にとって、親友の婚約者・千晶を助ける事は自分の命よりも重い責務だ。
雪で埋もれた山の中の行軍など、常識で考えれば無理な設定もあるかも知れない。
しかしその雪と寒さや冷たさを感じつつ、富樫を突き上げる想いに乗せられて一緒になってグイグイと読み進む事になるだろう。
また単なるアクションものではなく、ダムを占拠した犯人達や主犯格の男の計画、それに対応する警察や、ダムに残された職員や千晶達の描写も、作者の計算によって丹念に、そして緻密に描かれているのも特徴だ。
そして迎えるラスト。
富樫が意識を失いながら口にするうわ言に涙せずにいられなかった。
一作ごとに色んな顔を見せる真保裕一を代表する一作である事は間違いない。