- 著者:アンドリュー・クラヴァン
- 『真夜中の死線』 (創元推理文庫)
新聞記者のスティーブン・エヴェレットは、記者としての能力は高いが、下半身にだらしない。
その為にトラブルを起こし続け、友人のお情けで「セントルイス・ニューズ紙」で働かせて貰っていた。
しかし、そこでも上司の妻と寝てしまい、結果エヴェレットは仕事もそして家庭も失う危機に陥ってしまう。
そんな彼に事故にあった記者の代わりに与えられた仕事は、死刑執行を目前とした囚人、ビーチャムのインタビューを取る事。
わずか15分のインタビューの間に、記者の直感でビーチャムは無実だと確信する。
零時一分の死刑執行まで残された僅かな時間の間に、死刑囚であるビーチャムもだが、それよりも職と家庭を守る為に無実を証明しスクープを得ようとエヴェレットは奔走する。
キース・ピータースン名義の“ジョン・ウエルズ”シリーズでも有名な著者が、本名のアンドリュー・クラヴァン名義で贈るデッドリミット型サスペンス。
主人公のエヴェレットはヒーロー・タイプの人間ではない。
下半身にだらしなく、妻や娘のいる家庭を顧みないダメ人間。
そんな男が、最初は職と家庭の崩壊を守る為に動き出すうちに、いつしか記者魂がむくむくと起き上がり、必死になって真相を究明しようとする様子が、クラヴァンのその見事な語り口によって一級品のサスペンスとして描かれている。
正直、大きくツッコミを入れたくなる場所もあり、また都合良過ぎであると、いまいちな作品だと感じる読者も多いかも知れない。
しかし、自分にはその欠点を補って余りある魅力がこの作品にはあるよう感じた。
刻々と迫るタイムリミット。
果たして死刑執行は止める事が出来るのか?!
とにかく先へ先へと読みたくなり、ページをめくる手ももどかしく感じた。
しかしここはグッと我慢して、じっくり文章を読みたいところ。
ダメ人間な主人公に完全に共感する事は出来ないが、無実の罪で死刑執行されようとしているビーチャムを助けるよう、思わずエヴェレットを応援しながら読んでしまう。
刑の執行まで実質10時間程という実に短いタイムリミットのせいもあって、スピーディに語られる物語は展開によって視点が変わる。
真相を突き止めようとする主人公以外にも描かれる、無実ではないかと内心では疑いながらも職務を全うしようとする刑務所の所長や、刑の執行を待ちながら妻と娘を想うビーチャムの心情が更に物語の緊張感を盛り上げてくれる。
とにかく夜なんかに読み出してしまったら徹夜必死だろう。
“ジョン・ウエルズ”シリーズのようなハードボイルドとは一味違ったジェットコースター感覚のタイムリミット型サスペンスの傑作です。