- 五條 瑛
- 『上陸』 (講談社)
日雇いの現場で働く、
妙にインテリなところのある金満。
口が悪く喧嘩早く、若くして前科のある安二。
真面目な不法就労者のパキスタン人アキム。
年もこれまでの環境もバラバラだが、何故か馬が合うのかそれぞれの理由で金も無いので三人共同で暮らしている。
そんな三人は共謀して、過去にある犯罪に手を染めていた。
主人公三人の周りで起こる、密入国や不法就労に絡んだ揉め事を描いた連作短編集。
各短編の間に、金満が一人、年の瀬も迫った北国の酒場で飲みながら、三人で暮らした過去を思い出しているというシーンが、各短編をうまく引き立てています。
三人で共謀し、ある犯罪に手を染めた事件が、時系列的には一番古い物語でありながら、最終話として持ってきているのも、読了後に深い余韻が味わえてよかった。
日本で金を稼ごうと、不法に入国、そして不法就労する、貧困が激しい地域からやってくる様々な国籍の外国人達。
家族を養う為と言った目的で日本に入り込んでも、日本という国が持つ、ある意味“毒”でもある蜜の味を覚えると、彼らはどうなってしまうのか。
例えその蜜の甘さが分かっても、当初の目的を忘れずに日々を真面目に暮らす者や、安易な道に走ってしまう者。
また、その入国に際しての不法性から、犯罪組織に身を食い尽くされる者。
それぞれが問題を抱えて暮らしているという事、そして何より日本という国が抱えている、我々が普段は目を向けない所にある、大きな問題を考えさせてくれました。
こういった問題を提起する一方、物語としてもしっかりとしていて、ちょっとしたミステリーとしても楽しめます。
何より、各登場人物が活き活きとしている。
そしてそれだけに、主人公三人が離れ離れになる事になる事件は、読んでて切なくなり、最終話の彼等が最も輝いていた時の物語は、それを一層引き立てて、読了後に思わず息を「ふ~・・・」と吐きたくなるような満足感が得られました。
あと、個人的意見だが、この最終話はもうちょっと長い物語・・・長編とまではいかなくても、中篇くらいの物語にしたら、それはそれで面白いだろうな、と感じた。
是非、このような作品を書いて貰いたいもんである。