今日という日の物語
丁度壱年前の今日…そなたが歩けなくなったのは誰しもが平等な寿命じゃ。幼き頃よりそなたを見て来たがそなたは強い猫じゃ。なんせこれまでずっとやまいひとつけがひとつせずに生きてきたからの。じゃが、あんよが悪くなってからそなたの人間が何度も何度もわしに祈っての…どうか助けてほしいと自分の寿命は全部預けますどうかその分この猫を生かして下さいとこの猫が死んだ次の日に私の命を取って下さって結構ですでも次の日にして下さいこの猫をきちんと埋葬する時間だけは下さいませ…と何度も何度もな。そなたは幸せものよ~いい人間とめぐり会えると猫の運命が変わる。全てが決まる。うん?解っておるとな。そうか。思い出すのぅ…。あの海辺の町で産まれさ迷っておったおさなごが今こうして大事にされておる。わしも喜ばしいわぃ。 老い、寿命、それらからくるこたびのやまいはこれからもそなたをむしばみ続け、痛みや苦しみをもたらすじゃろう。だがしかし、そなたのあの…バカ正直な人間がついている限りきっと乗り越えてゆけるものだとわしはちゃんと見護っておるからな。だから…できるだけ長く、永く、そちらの世界に留まるがよい。そして…余りある愛を受け与え悔いのない生涯を全うしたのちに…わしのもとへ帰っておいで。「猫神様からの手紙(未刊)」より