《命を弄ぶ》ジュラシック・ワールド《人間への報い》 | そうでもなくない?

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 『ジュラシックパーク』シリーズの第4弾。

 

 正直、『ジュラシックパーク(第1弾)』は、マイケル・クライトンの原作が好きすぎて、まったく面白いと思えなかった。ディテールがほぼカットされて、ひたすらきゃぁきゃぁ言いながら恐竜から逃げる。そんな、低レベルな作品に幻滅した。

 原作の読了後、冗談抜きでこの傑作をスピルバーグ監督で映画化してもらいたいと思った。後日、その通りになることを知って有頂天になった。オレの見る目が正しかったのだと。

 でも、完成した映画は前述の通り落胆するものだった。スピルバーグ監督は、次回作『シンドラーのリスト』の制作費を稼ぐため子どもウケだけ狙った映画にした。そんなうわさも、まことしやかに囁かれた。ま、映画は大成功したわけだが。オレのような原作厨以外の人たちにとっては、面白かったらしい。

 だから、テレビで流れている時以外は積極的に観ようとは思わなかった。ところが、最近『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が地上波で放送されネットでも話題になり、ジャンル映画ファン界隈でもシリーズの評価が高いことを知った。そこで、アマゾンプライムでウォッチリストに登録し、シリーズ1から一気観してみたたのだ。

 そしてシリーズ3までの感想は変わらず。シナリオは浅い。B級アニマルパニック映画の域を超えない。時間がもったいなかったな。そんな風に思った。でも、せっかくだから最新作まで観よう。無料だし。

 というわけで、本日軽い気持ちで『ジュラシック・ワールド』を観たわけだ。軽い気持ちだから、テレビに繋がずパソコンの小さい画面で。……いま、それを後悔している。大きい画面で観ればよかったと。

 

 『ジュラシック・ワールド』、控えめに言って最高の映画だ。ただのアニマルパニックじゃない、様々な要素が盛り込まれ、深みのあるエンタメ作品に仕上がっている。

 

(ここからネタバレを含みます)

 

 まず、主人公の子どもたちの境遇。両親の離婚が決定的で、家族が離れ離れになる前にふたりの息子に思い出を作らせようと、恐竜のテーマーパーク『ジュラシックワールド』へと送り出したのだが、そこでトラブルに巻き込まれ恐ろしい体験をする。子どもたちは、アトラクションを楽しみながらも複雑な心境だ。時折、不安な表情を見せる。両親は仕事で忙しく、子どもたちのことを充分に見てあげられない。そんな様子も垣間見れる。悪くない。

 

 ところで現在、INGEN社の研究により、恐竜が遺伝子操作で復活していた。テーマパークにいる恐竜は、様々な動物の遺伝子が掛け合わされた創造物なのだ。

 そのパークの監督責任者が主人公の叔母で、パーク内で行方不明となった子どもたちを助ける役割を担う。現代的なキャリアウーマンながら、泥だらけで必死にジャングルを駆け回る姿や笑いを取る役目もあり、なかなか好感度が高い。

 

 そして、恐竜側の主役は「インドミナス・レックス」。高い知能、コウイカの擬態、カエルの体温調節、さらにラプトルの狡猾さと爪を持つ怪物。殺戮を楽しみ、体内に埋め込まれた追跡装置も自ら抉り取る。高次元のフランケンシュタインだ。

 今回は、ただ復活させた恐竜ではなく、遺伝子工学により作られた危険な生命体というところがとても重要だ。これにより、インドミナス・レックスがどのように暴れようと、他の恐竜が跋扈しようと辻褄が合う。違和感がなくなり、物語を粗を探す作業に注意を割かずに済む。

 さらにこれは遺伝子工学、つまり人間が生命を作り出すことへの問題提起に繋がっている。

 

 さらに、恐竜の兵器への徴用といったINGEN社の思惑・暗躍・裏切りなど、様々なテーマをエンタメの裏側に潜り込ませ、前述の通り作品に深みを与えている。恐竜同士のバトルも凄まじかった。次回作もしっかり意識したエンディングとなっており、脚本がしっかりしている。だから、みどこを満載なのに、とっ散らかった印象もほとんどない。

 

 そんなわけで『ジュラシック・ワールド』は、観るべき作品のひとつと断言したい。ただ、いきなり本作だけを観るのはおすすめしない。やはり、シリーズ第1作から観ていただきたい。おいしい水を飲むために、辛いトレーニングを我慢すべきなのだ。私は頑張りました。みなさんもどうぞ、頑張ってください。