るう。である。
本書を買ったきっかけは、解説が平山夢明先生だったから。
もちろん、京極夏彦の名は知っていたし、昔、京極堂シリーズは読んでいた。あの分厚い新書判を貪るように読んでいたのだから、たいそう好きだったのだろう。だが、なぜだかわからないが、突然興味が他に移り、京極作品に手を出さなくなってしまった。デレ蒸発。私の悪い癖である。
だが、そんな私を小説の神様は許してくれたようだ。『厭な小説』。破壊力抜群のタイトルを冠したこの本に、巡り合わせてくれた。
タイトルに加えて、平山解説だ。文庫本800円をオトクと感じさせるコラボレーションである。
さて、本作品は「厭な」物語7篇からなる、短編集である。
まず、第一話を読んで即、脳が沸騰した。瞬殺である。
狂い様が、歪み様が、半端ではない。
曲がりなりにも私は、ホラー大好きホラ男さんである。名作傑作残念作を、まあまあそこそこ読んできた。ある程度は免疫を保有している。だが、私の体は瞬時に蝕まれた。すべての物語は、脳を沸騰させた。
どういうことか?
平たく言うと、頭では理解できない物語だったのである。
どれも不条理で、理不尽だ。
何言ってるかわからない。
意味ないし、ありもしないこと書かれても、面白くもなんともない……。
左脳至上主義者ならば、そう一蹴するだろう。
それもわかる。
でも、私の言うことは、読めばわかる。
脳は理解しなくても、肌が粟立つのだ。
心が慄くのだ。
身震いが止まらない。悍ましいのだ。
透明ななにかがまとわりついているような、ずっと周囲が歪んでいるような、そんな感覚。読んでいる間は。
陳腐な言い方をすれば、異世界に足を踏み入れたような。
解説の平山先生によれば、京ちゃん(京極先生)は現代社会に〈妖気〉を蘇らそうとしているそうな。
まさにそれ。
京極作品に触れる時、隣に妖怪が出現するのだ。
それが「るう」と鳴くのだ。
わからないだろうか。
なら読むといいですよ。
