1973年に製作された、フランス・チェコスロバキア合作の作品。
独特なタッチで描かれる、不思議な異世界の物語。
惑星イガムには、青い姿の巨人ドラーグ族と小さな人間オム族が生存していた。オム族は力も弱く、ドラーグ族のおもちゃやペットにされていた。しかし、オム族の知性に驚異を感じ、駆除に踏み切る。危機を感じたオム族は、ロケットを開発し別の星に避難を試みる。オム族がたどり着いた星には、ドラーグ族の秘密があった。
オム族以外は、実にユニークな造形で、私の好みど真ん中である。文明の成れの果て、荒廃した未来とも見える舞台もいい。環境ビデオとして、ずっと流していられる。この作品に影響された作家も、たくさんいるのではないか。そういえば、進撃の巨人に似た場面が出てきたような……。そんなふうにも楽しめた。
ドラーグ族を人間と置き換えるならば、オム族は小動物や昆虫と捉えることができる。オム族を駆除する場面は、まるでバルサンを焚いているようだ。
だが、穿った見方をするならば、多民族国家にある支配する側と迫害される側を描いた物語とすることも、できるのではないか。
なぜならば、本作品に於いての支配側はドラーグ族であり、その容姿は人間とは程遠い。まるで半魚人のようである。人間の感覚では、それは決して美しいとは言えない。生活様式も、実に不思議なものである。
対してオム族は、衣装や生活はともかく、姿形は人間である。
現実の世界でも、迫害する側は身勝手な論理を振りかざし、迫害される側を虫けら扱いする。その姿は、どんな理由があっても醜いものである。ドラーグ族にそれが投影されていると感じても、おかしくないであろう。
深読みも楽しめる、映画である。
47年経ても色褪せない作品。一見の価値あり。