世に数々のスパイ映画はあれど、真面目なのにこんな破天荒でばかばかしいものはあっただろうか?いや、知らないけど。
ほぼ予備知識無しで観た。スパイ映画ということと衣装とタイトルから想像するに、英国のお話で王家直属の機関なのかな?と思ってはいたが、こんなパリピみたいな展開とは思わなかった。
まず第一に、人がいっぱい死ぬ。この手の映画では、おそらく考えられないくらいいっぱい死ぬ。しかも、死に方が派手。第一パリピポイント。気持ちいいを通り越して、心のリトルキムタクが「ちょ待てよ」と止めに入るくらい派手に死ぬ。
死に方も、ひどい。いや、もう言っちゃうけどひどいw 悪の奸計で、罪もない人たち(癖はあるけど)が大量死するのだが、突然狂ったように殺し合いを始める。描写も遠慮がない。ぼかさない。ひたすら、残虐に殺し殺されする。現場にキングスマンがいるもんだから、もうさらっと殺られる。
さらに、クライマックスではもっと死ぬ。今度は悪役側の人間だが、なんの予告もなく一斉に死ぬ。イカしたEDMに乗って、打ち上げ花火のように死ぬ。その映像は、でんじろう先生の科学実験のように美しい。だが、もうね、リトルキムタクが青くなって引っ込んじゃうくらいの凄まじさ。人って、度を過ぎた恐怖を感じると逆に笑ってしまうというけれど、今回はそれも通り過ぎて放心してしまった。監督すげえな。ストレス溜まってたのかな?
次に、悪役の用心棒が『殺し屋1』。足に日本刀をつけて、カポエラで襲いかかってくる。
最初の犠牲者は、頭頂から股間まで真っ二つ。二枚におろされるシーンは、以前『殺し屋1』で観たことがある。
※殺し屋1
またこの用心棒、美貌とスタイルはもちろん、カポエラの技もめっぽう美しい。もともとカポエラ自体、奴隷が格闘の技とばれないよう舞踏に模して編み出されたものだが、演じるソフィア・ブテラの本職はダンサー。その能力が遺憾なく発揮された殺陣は、さらにダイナミックに洗練され、観るものの心を奪う。その美しさに見とれている間に相手は命を落とすのだが、実は動きが早すぎて見とれてる暇もないという。
両膝から生えた光り輝く日本刀の造形も自分好み。スーサイド・スクワッドに加わってほしい。
そして、英国マンシップを強烈に皮肉るシーンの数々。
キングスマンは全員、上等な仕立てのスーツ(防弾仕様)。髪型は七三分けのリーゼント。「紳士たるもの」から始まり、礼儀やマナーを完璧に身に着けている。武器は蝙蝠傘型の多機能銃。と、隙のない英国紳士っぷりだが、そのことごとくに嫌味を感じる。英国人の嫌なところをきゅっと濃縮したように思え、ニヤニヤしてしまう。
監督のマシュー・ヴォーンは生粋の英国人のようで、さすが皮肉たっぷりな描写はお手のもの。自国のことをこんな風にイジっていいのかとも思うが、これこそが英国人魂だし、他の国の監督がこんなことしたらキングスマンが暗殺にくるかもしれない。マシュー・ヴォーンにしかできない。
悪役は、格好からして the米国人。ブラックで服装はキャップとスタジャン。超金持ちで環境問題に強い関心がある。この辺も強烈な皮肉が込められていると感じる。
変装したキングスマンが乗り込んだとき、出された晩餐がマクドナルドだったシーン。ここも好き。正体のバレているキングスマンを、悪役がバカにしているシーンなのだが、米国人はマクドナルド食ってりゃいいんだろ?と、英国人だってうまいもんもまずいもんもわからないよね?という二重の皮肉を感じる。
また、実はけっこう(とても)お下品だったスウェーデン王女という設定も、だいじょぶかいな?と心配になるレベル。
細かい部分も含めて徹底している監督。良い。
というわけだけれど、実はそんなに満足したわけではない。
本作の前半が、主人公(エグジー)の養成所時代の話であり、主に躍動していたのは、エグジーの父親に命を救われ、その才能を見出しスカウトしたエージェントのガラハッド。彼も相当有能なキングスマンで、申し分なくかっこいいが……あれ?主人公どっち?
ガラハッドはのちに命を奪われるのだが、エグジーはそこから無双の活躍で世界を救う。え?あんた養成所を卒業したばかりだよね?いくらなんでもその超人設定はちょっと……と少々冷めてしまったところもある。
とはいえ、二作目はいよいよ本命のエグジーが冒頭から活躍するだろうから、このあと観てみようかなと思う。1作品で判断できないところが、優柔不断で貧乏性の私なのです。
では、英国スパイ活劇の世界へ行ってきまーす。