南アフリカ共和国のヨハネスブルグ上空に、宇宙船が飛来。動かぬ船に軍が突入すると、大勢のエイリアンが極めて劣悪な環境で生存していた。人間は、彼らを難民として第9地区に閉じ込め、第9地区を管理する組織(MNU)を立ち上げ、生活領域を人間と分離し区別(差別)していた。だが、MNUには秘密があった……。
という、役者と舞台が揃えば、アパルトヘイトをモチーフにした作品だと想像するが、政治や社会を風刺する作品ではなく、娯楽作品として製作されているとのこと(Wiki調べ)。
確かに、謎の組織MNUとエイリアン、軍隊、ギャングが揃えばエンタメ作品としても申し分ない。それに、嘲笑し蔑んでいたエイリアン側へ主人公が付くことになった後は、想像以上のドンパチが繰り広げられる。主人公 vs 軍隊。ラストマッチに登場するは、パシフィック・リムかエイリアン2のパワーローダーか。これでもかの迫力バトルが繰り広げられる。命を落としかねないピンチに何度も陥る主人公、簡単にミンチと化す兵隊、飛び散る血肉、結局やっつけられる悪役など、娯楽作品の魅力も満載。悪くない。いや、かなり面白かった。
だけど、なんだか後味はスッキリしない。それはやはり、舞台が南アだからだろうか。詳しく知ってるわけではないが、アパルトヘイトやそれに類する人種差別・迫害をどうしても意識してしまう。鑑賞中、その種がどこかに落ちていないかと、意識がバトルシーンに集中できない。あぁ、面倒くさい性分だ。
監督の出身地がこの地であるから、やはり影響は小さくないと思うのだが。まぁ、浅薄な自分が語れることでもない。
そういう作品だからなのか、評価はわりとはっきりしている。ただし、エンタメとして高評価している方が多いように思える。前述のとおり、戦闘シーンの激しさやエイリアン自身の造形、武器・宇宙船などは、好きな人にはたまらないだろう。SF好きの私はたまらなかった。
いろいろな見方で楽しめる『第9地区』。けっこうおすすめ。