https://movie-tsutaya.tsite.jp/netdvd/vod/artDetail.do?pT=0&titleID=8003100513
またまた、亀井亨監督作品である。
本作も、かなり興味深いものであった。
私が思うに、この作品のテーマは「地方から逃げられない若者のあきらめ」である。
舞台は、どこか地方の海辺。国道と思しきまっすぐな道は、陽炎に揺らいでいる。
主人公は金融機関の窓口担当。勤め先は国道沿いにあるが、周囲にそれ以外の建物は、家屋以外見当たらない。
これはのちに出てくるパチンコ屋にも当てはまり、ぽつんと建っていることで、ここがうらぶれた地方都市ということを表している。
この舞台の時代を考えると、そういうところに生まれた者はいつか大都市に出て一旗揚げたいと思っており、こんなところで一生を過ごすのは御免だと考えている。だが、いつかそれは諦めに変わる。小さな橋の欄干に背をあずけ、昼間からカップ酒をあおる老人と同じ道を歩んでいくしかない。そう理解し、足掻くことをやめ、でも鬱屈はどんどん積もってゆく。一般論だが、そういう時代があった。
主人公はおそらく高卒。高校時代の先輩だったヒモとふたり、薄汚いアパートで暮らす。
窓口業務とはいえ勤めているのは金融機関だから、学生時代は成績も悪くなかったにちがいない。
こういう地方では、そこそこ優秀な人間は役所か郵便局などの公共機関、あるいは金融機関と相場が決まっている。
だが、彼女はまったく幸せそうではない。それどころか、ヒモに貢ぐため客の金を横領しているのである。それが上司にバレて……というのがあらすじだが、もはや物語はあまり意味をなしていない。それよりも、画面からにじみ出る雰囲気、テーマがじわじわと肺に侵入し呼吸を乱す。
以下、見どころ。
○金を淡々と横領する主人公。まったく感情が出ていない。心配や焦り、恐怖さえも……。
○同じく淡々とセッ○スする主人公。
○バッグに流れるラテンギターの音色。風景と相まって、無国籍感が最高。
○鬼畜共が撃ち殺されるシーン。拳銃を撃たせているときも撃つときも、やはり無表情。
○刑事にこれからを問われたときの台詞。「わたし、この町でしか暮らせそうにないんで……多分ずっと、このままかなぁって……」
このあたりが、亀井監督の真骨頂ではないか。
妙に激しくしない、リアルな描写ではない、だがそこにある現実が克明に描写されている。
そんなふうに感じる。
この町に台風が来る。
天気予報も注意を喚起している。
刑事も、それを口にする。
台風はすべてをさらっていき、地面を洗い流す。
でも、この町は、わたしはなにも変わらない……。
そう、何も変わらないのだ。
私は、息を乱す。胸が苦しい。この映画は。