くそっ、暑い……。なんだこれは?暑さで頭が狂っちまったのか? それとも特撮の撮影か……?
俺の目の前に、でっかい樹がある。樹齢七千年の縄文杉みたいにぶっとくて、ゴツゴツしたやつだ。生えているのは、さっきみどりを埋めた場所。屠殺場の豚みたいに喚くみどりを、スコップでぶん殴って黙らせて埋めた。そしたら、そっから樹が生えてきやがった。なんだよこれ……。
「あんだ〜よぐもやっでぐれだわねぇ」
ぶっとい幹からぶっとい枝がわさわさ生えていて、そのうちの一本にみどりが生えている。いや、俺にも何言ってんだかわかんねえけど。もっかい言うと、枝の先っちょがみどりの上半身になっている。
「てめぇくたばってねぇのかよ! てか、なんだよそれ!」
「あだしどぉ、あの女ぁ〜、どっぢをえらぶのさぁ〜」
「てめぇ〜、寝言こいてんじゃねぇぞ!」
枝は何本も生えていて、それぞれの先が女の上半身になって蠢いている。生えているのは五月みどり、小松みどり、宮崎緑、うつみ宮土理、伊藤みどり、海老名美どり、木之内みどり、辛島美登里、加藤みどり、早川みどり……。
「あんだぁ〜だれをえらぶのよぉぉぉ」
「えーと、じゃぁ五月みどりで」
「BBAじゃねえか!」
「てめぇだってBBAじゃねえか! それに俺は年増が好きなんだよ!」
「じゃあぁぁぁなぁんでぇぇあだじをぉぉぉずでだのぉぉ」
「てめえは年増の上に脳みそが腐ったグラタンだからだよ! ぐずぐずなんだよ!」
「あらあんた、あたしが選ばれたんだから大人しく譲りなさいよ。グラタン脳であたしに張り合おうだなんて百年早いわよ」
「五月は急に入ってくるんじゃぁないわよ! このエロBBA!」
「なによ! あんたなんてスコップで顔面叩かれて、焼かれる前のベシャメルソースじゃない。マカロニはみ出してるわよ!」
「エロ! マカロニ! あーはっはっ」
「うつみはおだまり!」
「お姉さんをばかにするな、このケロンパが! あんたのみどりはカエルの緑じゃないか。ケロケロ鳴いてるのがお似合いよ」
「ごるぁ〜あたしも混ぜなさいよー」
みどりたちは、お互いを罵り始めた。しまいには枝ごとグワっと動き出し、掴み合いの喧嘩が始まった。
「きぃ! シワシワのくせに肌を露出するんじゃないわよ!」
「あんたこそ毒嫁キャラの席はもうないのよ!」
「あたしの3回転アクセルを喰らいなさい!」
「必殺! 木の葉落としぃぃぃ!」
「カーツーオー!」
もう何でもいい。早く終わらせてくれ。てか、逃げてもいいんじゃね? 俺? なんでこれ見てんの?
しかし、俺の足はなぜか動かず、みどりたちのバトルに釘付けだ。
ぎぇぇぇぐわぁぁぁどうらっしゃいぶーぎゅぎゅぎゅぎゅぱしぱしぱしぱしばきばきばきばっこーーーーーーーん
徐々に勝敗が着き、枝が身体ごと地面に落ちてゆく。最後に残ったのは、五月みどりとマカロニみどり。
「きぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「チェストォォォォォォォ!」
裂帛の気合とともに両者がぶつかりあう。ガズッという音とともに顔面マカロニが折れ、ぶらりと垂れ下がった。五月みどりの勝利だ。
「しんさん! 抱いて!」
五月みどりが俺に近づいてくる。全身ちぎれた葉や汁で真っ緑だが、やはり女優だ美しい。俺は答える。
「抱けるわけねえだろこの化物! 俺は年増も好きだけど若い女のほうがもっと好きなんだよ!」
みどりのばかでかい口がパカっとあき、俺の頭は食いちぎられた。
了