「相田家のグッドバイ」 森博嗣著
前に読んだ「喜嶋先生の静かな生活」のような私小説
と考えていいのかな。
森先生のご家族なのか、何も書いてないので分からないけど、
この家族、相当変わった人たちに見えるかもしれない。
ただし、ワタシにとってはあまりにも自分や自分の家族と
似ていて笑ってしまった。
子供は、自分の家族しかサンプルがないのだから、大きくなる
までは、この生活が普通と思って育ち、そのうち友達の話や
結婚相手の家族と付き合ったりするうちに、常識が覆ってビックリ
・・なんてことあるある(笑)。
相田家の父秋雄は、うちの死んだ父そっくり。
ヒトと感覚が違うし、いつも黙っていて何を考えているのかさっぱり
だったけど、秋雄が紀彦を分析してゆくくだりで、ああそうかと。
死に逝く時にも、何だか投げやりで諦観しているように見えたのも
実は、自分の中で納得して気持ちをシフトして、死を受け入れたと
理解できた。
それなりに、自分を貫いていたんだ。
うちの家族は冷たいと、兄嫁に言われた事があったけど、
それもみんな、家族に対する接し方が相田家みたいにそれが
その家のスタイルだったからというだけ。
自分の家族のありようを見直すことができて、とても収穫だった。
既に、解散している家族・・。
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話の中で、紀彦は自分の立ち位置が幼い頃から微妙に
ずれていた事に気づく。
幼くして死んだ兄を悼む両親の為、兄のポジションで期待に
応えようと無意識に”頑張って”いたのだ。
つらい事、我慢している事に一番自分が気がついていない・・
って事、あるんだ。それも、自分がその頃の父母よりも
年取ってから気づくなんて。
人間の、それぞれのヒトの心の不思議。
そのほかの作品にも時々散見される自殺願望とか。
が、しかし・・
暑苦しい情熱がなくたって、分かり合える事はある。
妻・智紘の普通の感覚は、紀彦の心を解き、
現実に戻す鍵になる。
こうゆうことって、ウツクシイと想うのだ。