「ふぅーっ。」
口から吐く息と共に、煙が出ていく。
いい感じに、身体中に回ってきた。
とても気分が良い。
もう一口、大きく吸って溜めてゆっくりと吐き出す。
あー気持ちいい。
とある従者から貰った、一本のナイフ。
よく切れる物を選んで、私にくれた。
彼女には、言った。
「ちょっと、肉を切るのに使うの。」
ってね。
そして、この気分を高める物。
たまたま近くを歩いてた、ノルマ云々と呟いていた可哀想な兎から、買い付けた物だ。
また今度、買ってあげようかな。
「あら、流石。よく切れること。」
右手で弄んでたナイフで、軽く左腕をなぞる。
すうっと薄い切れ目から、じんわりと赤くにじむ。
少し、力を入れた。
身が割れ、先程より勢い良く赤いものが流れ落ちる。
けど、痛みは無かった。
気分は良くなる、痛みはない。
なかなか良い物を作ってる。
とは言え、こんな切れ目は目立つ。
あまり他人とは会わないけれど、あの魔法使いみたいに急な来客も来る可能性もあるし。
私は裁縫は得意分野。
むしろ、私が裁縫出来なかったら人形使いを名乗れないし。
ささっと、切れ目を縫い付ける。
こう見えて、私は誰もいない時はいつもこの調子。
だから、私の身体は切れ目だらけ。
縫い目だらけ。
この娘達と同じ。
今日は良いナイフに良い物。
良い事ばかりだ。