ネット上の膨大な情報の中からある日突然、自分に響くものに出会う事がある。
そのひとつが2022年に84歳で亡くなった三宅一生氏の番組。
NHK WORLD-JAPAN 作成。
"ISSEY MIYAKE: The Human Inside the Clothes"
本人や知人のインタビューを中心に彼の人物像がわかりやすくまとめてある。
ISSEYさんの若い頃がかっこいい。
70歳を過ぎた頃、ISSEYさんはオバマ大統領の反核兵器演説をきっかけに自分の原爆体験を明かした。
それまで広島出身としか言っていなかった。
「ピカドン・デザイナーと呼ばれたくなかった」と本人インタビューで一言。
淡々としていたけれど、色々あっただろう。
あえて思い出したり考えたくない、と言っていた。
ちらっと「時間がない」という話しもあった。
これって、わたしにも少しだけわかると思った。
被爆していると発がんする確率が高いかもしれない。障害が出るかもしれない。健康な時間は普通の人より短いかもしれない。
こういう「かもしれない」を自覚して、覚悟をして生きるってすごい。
わたしの場合は覚悟も何もなく、「突然」のがん診断だった。
そしてアッという間に「乳がんの○○さん」になった。
結局わたしは生き残ったので、「乳がんサバイバーの○○さん」になった。
○○さんは後遺症でしんどい?大丈夫?と心配してくれる人は大勢いた。
一方、○○さんは早死にするかな、という憶測はわたしの知らない所で普通にあったのだろう。
闘病生活が一段落して職場復帰ができるようになった時、誰もわたしの病歴を知らない所に転勤した。
これはとっても良かった。
がんの事を考えないですむ時間が増えた。
デザイナーという仕事について語るISSEYさんは幸せそうだ。
子どもの頃からデッサンが上手だったとか、お母さまが素敵な服を作ったという情報は参考にはなる。
でも才能だけでなく、並々ならぬ覚悟があって、膨大な努力があって、時間をかけて、たどり着いた先が世界トップのデザイナーというのが面白い。
この番組のおかげで、物・服を創造するアート・芸術を仕事とする人達の人生を垣間見る事ができた。
創造の仕事に終わりはない。
仕事って何だろう。
これまで時間を仕事優先で割いてきて、組織から給料もらって、年金をもらえるようになったら仕事は終わりだと思っていたけれど、そうじゃない仕事がある、というシンプルな事が今のわたしに響いたのだ。
とてもいい番組でした。ありがとう。