玄関で人の声がする。
翔「ごめんください、ごめんください」
桜「は~い」
玄関に向かう桜、扉を開ける。
桜「翔」
翔「やっと見つけた、携帯の電源を切るなよ。心配するだろ」
桜「ちょっ、近所に聞こえるから家の中に入って」
翔の腕をつかみ、玄関の中にいれる桜。
桜「何しに来たの」
翔「何しにって」
桜「私ちゃんと言ったよね」
翔「あれで納得出来る分けないだろ、ちゃんとした理由を教えてくれよ。なあ何を隠してるんだ?何がそんなに桜を苦しめてるんだ?」
桜「それは、翔には関係ないから。とにかく結婚は出来ないし、もう二度と会わない」
翔「関係ないって」
桜「だから、私は幸せになる資格なんてないのよ」
翔「資格がないって、何なんだよ」
桜「そう言うことなの」
翔「それは本当の気持ちなのか?」
桜「本当の気持ちよ決まってるでしょ。もう気がすんだでしょ帰って」
翔「嫌いになったならそう言えよ、幸せになる資格がないなんて誤魔化すなよ」
桜「じゃあ嫌いになった、顔も見たくなくなった。こう言えばいいの?」
翔「お前って本当に嘘が下手だな。分かった、今日はこれで帰る」
桜「もう来ないで」
翔「嫌だね、俺は諦めが悪いんだ。また来る」
去って行く翔 出て来る《わたし》
桜「ごめん翔」
わたし「まさか結婚を断ったこと後悔してるんじゃないわよね?幸せになれるチャンスだったのにって」
桜「……」
わたし「幸せになれる訳がないでしょ。あなたにはそんな資格はないんだから。それに私あの男嫌いだわ」
去って行く《わたし》
桜「…」
居間(夕方)ボーッと座っている桜、戻って来る友則と希美。
希美「桜、お父さんったらね散髪屋に行ってたのよ、桜?」
振り返り気を失う桜。
希美「桜‼️桜‼️しっかりしてお父さん、お父さん助けて」
希美の声に驚き入ってくる友則
友則「大きな声でどうした?」
希美「お父さん桜が」
友則「桜しっかりしろ、お母さん先生に電話して往診に来てもらって」
桜を抱えあげる友則
希美「そうね、先生に電話ね」
友則「部屋に連れて行っておくからな」
去っていく友則
電話をかけようとして、座り込む希美。
希美「どうして、どうしてなの?やっぱりまだダメなの?どうしたらいいのかしら、桜まで失ってしまったら」
戻って来る友則。
友則「気を失っているだけだから大丈夫みたいだ。お母さん大丈夫か!」
希美「お父さん、全部私のせいなんですよね。隼人があんな風に亡くなったのも、桜の病気の事も」
友則「お母さんそれは違う、お母さんだけのせいじゃない。そんなに自分を責めるな。だからこそ今までの分も桜を守ってやらないと」
希美「そうねそうよね、桜の為に」
玄関で正也の声。
正也「こんにちは、兄さん?お~い入るぞ」
虹子「お邪魔します」
正也と虹子が来る。座り込んでいる希美に気が付き、駆け寄る虹子。
虹子「やだ、希美さんどうしたの、大丈夫!」
友則「正也」
正也「おい、何があったんだ?まさか桜か?」
友則「ああ、倒れたんだ」
顔を見合わせる正也と虹子
希美「桜、桜を見に行かなくちゃ」
虹子「私も行くわ」
希美「虹子さんありがとう」
虹子が希美をささえ、二人去って行く。
正也「おい、大丈夫なのか?」
友則「どうだろう」
正也「大分良くなって来ていたから安心していたんだが。それに、今日はせっかくいい話を持って来たって言うのにな」
友則「いい話って?」
正也「この間話をしただろ、桜に付き合ってる人がいるって」
友則「ああ」
正也「その増岡君が結婚を切り出して来てな、ココはやっぱり俺達だけじゃなく、ちゃんと実家の両親に挨拶したいって言ってくれたんだよ」
友則「そうなのか」
正也「ちょうど明日は桜の兄の命日で、二十五年ぶりに桜も戻るから、こっちに来たらどうかって言ったんだ」
友則「じゃあ、その増岡君が来るのか」
正也「その予定なんだが、桜がこんな調子じゃ」
友則「桜は断るかも知れないな」
正也「多分な、でも善いヤツなんだ、彼を逃したらもう後がないぞ」
考え込む友則。
友則「桜はまだ、自分を許していないんだろう」
正也「……」
友則「俺のせいだ、あの日隼人の遺体の傍にあった赤いサンダルを見て、俺は桜を責めたんだ。なぜ森に行ったなぜ落としたんだ、なぜなぜって」
正也「そうだったな」
友則「まだ七歳の我が子をだぞ、憎んで責めたんだ、お前のせいだって」
正也「あの時は普通の精神状態じゃなかったからな」
友則「でも、あの子は気付いていた。自分は、兄ほど愛されていないって」
正也「そんな事はないだろ、どちらもかわいい我が子だろ」
友則「いやそうなんだ。俺は憎んでいた。本当ならもう一人子供がいたはずなんだから」
正也「桜の双子の姉か」
友則「どちらか一人しか助からないって医者に言われて、だから苦渋の決断をした。でも、どこかでずっと桜が」
正也「やめろよ今さら。それに桜には関係のない事だろ」
友則「分かっている。それなのにあの時、隼人もこの子は奪うのかって思ってしまったんだ」
正也「……」
友則「桜の病気も俺が招いた事なんだよな」
正也「分かっているなら、弱音なんか吐くなよ!」
友則「そうだよな、すまない来て早々こんな事になっていて」
正也「それより希美さんの事も気にしたほうがいいぞ、あれは相当」
友則「そうだな」
虹子がやって来る。
正也「桜の様子はどうだ?」
虹子「いつもの寝顔よ、落ち着いているわ」
正也「そうか」
虹子「希美さん、桜についてるって言うから、私が晩ご飯の用意をするわね」
正也「お前大丈夫なのか?」
虹子「なによその言い方、献立は聞いて、来たから大丈夫よ」
友則「すまないな、虹子さん」
虹子「いいのよ、私ね感謝しているの。だって子供を育てる事が出来たんですもの。かわいい桜を育てさせてもらえて、本当に感謝してるのよ」
正也「俺たちは、兄さんたち以上に子供に縁がなかったからな。桜は我が子同然なんだ」
友則「そう言ってもらえて、ありがたいよ」
虹子「じゃあ、お台所を借りますね」
去って行く虹子。
正也「で、桜に双子の話はまだしてないのか」
友則「ああ、知らなくてもいい事だと思ってな。でも、そろそろ話したほうがいいのかも知れない。引き金はそこかもしれないと思うんだ」
正也「そうだな、今がその時なのかも知れないな」
友則「その時か」
台所のほうから虹子の声。
虹子「あなた~暇ならちょっと手伝ってくださいよ」
正也「暇じゃないんだが」
友則「俺も手伝おうか?」
正也「いいから、桜と希美さん見て来いよ」
友則「ああ」
去って行く友則。
正也「さてと、手伝ってくるか」
去る正也。
翌日の居間、希美が出て来る。
希美「もうこんな時間だわ。花とお米とお線香用意しないと」
桜がやって来る。
桜「お母さん、何かする事ある?」
希美「桜、いいのよあなたはゆっくりしていなさい」
桜「でも、やっぱり何かしたくって」
希美「じゃあ、お父さんたち呼んで来て。昨日遅くまで飲んでたから、まだ起
きて来ないのよ」
桜「分かった」
やってくる虹子。
桜「おはよう、虹子さん」
虹子「おはよう桜」
桜「お父さん達をおこしてくるね」
と言い去る桜。
虹子「お願いね❗️希美さん、洗濯物干してきたけど他に何か無い?」
希美「ありがとう無いわ。そうそう虹子さん昨日はありがとう」
虹子「いいのよそれより桜、今のところは大丈夫みたいね」
希美「そうだと良いんだけど」