新開家の居間(昼過ぎ)壮一と陽太が玄関にやって来る。
壮一「こんにちは」
陽太「こんにちは」
希美が出て来る。
希美「は~い」
と言いながら、玄関へ向かう。
希美「あら中矢君に小宮君、さあどうぞ上がって」
壮一「お邪魔します」
3人が入って来る。紙袋を持っている陽太。
希美「よく来てくれたわね」
壮一「ご無沙汰してすみません」
希美「いいのよ、こうやって今年も来てくれたんだし。やだ、お父さん散歩に行っちゃったのよ」
陽太「お構いなく、焼香に来ただけなので。あ、これ」
紙袋を渡す陽太。
希美「いつもありがとう」
希美、紙袋からお供えを出し仏壇に置く。
希美「隼人、今年も二人が来てくれたわよ。良かったわね」
壮一と陽太が仏壇に行き、手を合わせる。
希美「お茶でも入れるわね、そこに座ってて」
お茶を入れに去って行く希美。二人戻って来る。
壮一「あの、本当にお構いなく」
陽太「お構いなく」
お茶とお菓子を持って来る希美。
希美「遠慮しなくていいのよ」
壮一と陽太が座布団からおり、土下座をする。
壮一「おばさん、本当に本当にすみませんでした」
陽太「本当にすみませんでした」
希美「やだわ、二人とも頭を上げて」
壮一「俺たちのせいで隼人は、何度謝っても謝り切れません」
陽太「本当に、本当にすみませんでした」
希美「もう、いいのよ」
壮一「おばさん」
希美「だって、知らない振りも出来たはずのに、あなた達は正直に話してくれたわ。それに、今年もこうやって来てくれたじゃない」
陽太「でも」
希美「どうしたって、あの子はもう帰って来ないんだもの」
押し黙る壮一と陽太。
壮一「そうですよね、本当にすみません」
希美「さあさあ、お茶をどうぞ」
壮一「はい、ありがとうございます。でも、良かったです」
希美「え?」
壮一「桜ちゃん、帰って来れたから」
希美「なんでその事を?」
陽太「駅前で桜ちゃんを見かけた人がいて、面影が残ってたからそうだろうって」
希美「そうなのね」
壮一「長かったですね、もう大丈夫なんですか?桜ちゃん」
希美「ええ、なんとかね。それに、少しずつでいいと思っているの」
壮一「そうですか」
希美「ほらお茶をどうぞ、このお菓子もおいしいのよ」
陽太「いただきます」
壮一「いただきます」
奥から桜が出て来る。
桜「お母さん明日って何時ごろ、あ」
陽太「やあ、久しぶり覚えてるかな?」
桜「どちら様ですか?」
希美「あ、あのねこの子たちはね」
壮一「いいんです、おばさん。ごめんね桜ちゃん。陽太、もう帰ろう」
陽太「そうだな」
帰りだす壮一と陽太。
希美「もっとゆっくりして行けばいいのに」
壮一「いえ、明日また隼人に会いに行きます。おじさんに、よろしくお伝えください」
陽太「じゃあ、失礼します」
二人去る。
桜「お母さん今の人達って」
希美「隼人の友達。毎年命日に来てくれるの」
桜「兄さんの友達」
希美「そうよ同級生。隼人も生きていたらあんな感じだったのかしら」
桜「……」
希美「やだ、外が暗くなって来ちゃったわね。お父さんたら、どこまで散歩に行ったのかしら」
桜「私、探しに行ってくる」
少し感情的になっている希美。
希美「馬鹿言わないの!二十五年ぶりに帰って来たのよ、桜のほうが迷子になるでしょ!」
桜「お母さん?」
希美「やだ私ったら。お母さんが行ってくるから桜は留守番をお願いね」
去る希美。
桜「行ってらっしゃい。そうだよね町も変わって行くんだ」