あちらこちらでパソコンのキーボードを打つ音や、ゲームのコントローラーを動かす音が聞こえる。


けれど今、一番自分の耳に届いているのは

心臓の音。


自分の心臓の音がこんなに聞こえる事なんて、そうない。



智幸がキスをしながら舌を絡めてきた。

「………んっ……」

ふいに漏れた音を聞いて、智幸が更に激しく舌を絡めとる。

「んぅ……っはっ……」

私が苦しそうなのに気づいて智幸が唇をはなすと、ツーと糸を引いた。


「リカ……」

上気して涙目になった顔をあげると、智幸が切なそうな顔をして言う。


「その顔エロいな」

「ばっ……ばかっ何言って」

そう言い切る前に再び舌が入ってきた。

智幸は舌を絡めながら右手で服の上から胸を揉みだし、中心をわざと避けるようになぞる。


「……とも……ゆきっ」

「ん? どうした? リカ」

触って欲しい所に触ってくれないもどかしい気持ちが更に欲を掻きたてた。

「焦らさ……ないでっ」

「それじゃわからないぞリカ、どうして欲しいかちゃんと言ってごらん」

智幸のその言葉でさえも、私の身体を熱くする元になってしまう。


「ちゃ………ちゃんと触って」

欲望と羞恥で頭がぐちゃぐちゃになる。

「仕方ないな……今日はそれで許してあげよう」

智幸は服の下に手を潜らせて下着をずらし直にそこに触れた。

「あっ………」

焦らされた分快感が増して、思わず声がでてしまった。



ここがネットカフェだという事を忘れてしまいそうな気持ちになってしまう。

「リカはやらしいな……そんな声出して……誰かに聞いてもらいたいのか?」

「違っ……そーぢゃなくてっ………んはぁっ…!…んんっ……」

声を出さないように手で口を押さえても、荒くなった息をとめる事は出来ない。

智幸が私の服を下着ごとたくしあげて先端を舌で転がした。

「んぁッ……!」

思わず声をあげてしまう。

智幸は自分の指を私の口の中に入れて声を出させないようにした。


「ぁむっ……んっ……んはぁっ」

快感に絶えようと必死で智幸の指を舐める。

智幸は一瞬眉を寄せて小さなため息をつく。

「指でこんな気持ちになってたらやばいな……」

そう言いながら指を離してキスをしてきた。


太ももの内側をなででいた片方の手はそのまま移動して

下着の上からでもわかる湿った部分をひと撫でした。

「ひぁんっ……!」

「リカ………外からでもわかるよ」

「だ……だって………」

「だって…?」

「智幸が気持ちよく……っするからだよ……」

智幸が一瞬目を開いた後、フっと笑って返した。




「じゃあもっと気持ちよくさせてあげる」


ペタしてね

 落ち着いて話せる所に行こうと向かった先はネットカフェ。

ペアシートを確保して座ると、なんだか異様にドキドキしているのが自分でも分かった。



私が智幸をじーっと見つめていると、智幸はおでこの辺りを掻きながら言った。



「…その目が……駄目なんだ」



予想もしていなかった発言に、頭の上にクエスチョンマークが飛び交う。

「どーゆう………事?」


「その目で見られると、リカの全てが欲しくなってくる」




ドキン――――


心臓の音が早くなる。



「手を繋げば、キスをしたくなる。 キスをすればそれ以上の事がしたくなる」

耳まで真っ赤にしながら智幸が言った。


「好きと言ってしまえば、独占したくなる。 だから……何も出来なかった」

「じゃ、じゃあ……『らぶ☆チェリー』の事も?」

「確かに好きだが、リカ程ではない」

「そー…だったんだ………家に入れてくれなかったのも?」

「そういう事だな……。 それから夜、会えないって言ったのは……」

口ごもっている智幸を、無言で見つめる。



「夜は………一緒にいると襲いたくなるから」



智幸に見つめ返されて、心臓が跳ね上がる感覚を覚えた。



「い………今も……?」

「もちろん、さっきからずっと」


あまりの直球な理由にどうしていいかわからなくなった。

「え、えと、えと………」


戸惑っていると、智幸が笑いながら言う。

「さすがにここでは無理だけれど、僕はリカに嫌われると思ってずっと何も出来なかったんだ」

「そっ、そんな事で嫌うわけないじゃん!」

「リカは心がピュアだから、きっとそういうのは嫌いなんだろうと思ってた」

「そ………そんな事ない! 変に嫌われてるような態度取られるよりいいっ!」


自分でも何を言いたいのかわからなくなって焦る。

「あっいや、だからってされたいとかそーゆーわけ……じゃなくて……」

墓穴を掘って顔が赤くなった私を見て、智幸がフッと笑った。



「じゃあ………」



智幸がそう言いながら唇に軽く触れる。

チュッとついばむ様なキスの後、少し顔を赤くして言った。




「どうなっても知らないよ?」


ペタしてね

仕事が終わった私は、早番だった智幸の待つ場所に向かった。


「お待たせー」

「お疲れ様。 さすがに夜は寒いな……」

「ごめん、結構待たせちゃった?」

「いや、30分位だから大丈夫だ」

「結構待ってる!」

マフラーもコートも着ずにいた智幸に、自分の着けていたマフラーをかけてあげた。

「これでちょっとは寒くないでしょ?」

私がニコっと笑うと、智幸はそっけない態度で「じゃあ、行くとするか」と言い放ってスタスタ歩きだす。


(私、何かしたかな?)


勘違いだと割り切って後をついていく。

行き交うカップルは皆、腕を組んだり指を絡めて繋いでいるのに私達はなんなんだ。


(手………つなぎたいな……)


少し前をスタスタ歩く智幸に追いついた所で、思い切って手をつないでみた。

けれどその後起きた事に、私は動揺が隠せなかった。



智幸が繋いだ手を振り払ったのだ。





………え?


「とも………ゆ…」

「ほら、早く行かないと店が混んでしまうぞ」

冷静に智幸が言葉を返した。


何事もなかったかの様にまた歩き出す智幸。


………何? なんなの………?

今までの智幸との出来事がフラッシュバックする。


立ち止まっている私に気づいた智幸が、振り返って目を見開いた。


知らないうちに涙がこぼれている。

「リカ……?」

「ね………智幸どして?」

声にならない声で話す。

「私の事……嫌いなら嫌いって言ってよ…」

「そんな事一言も言ってないぞ」

「じゃあ何で!?」


周りにいた数人が、大きな声に驚いて振りかえる。


「私………智幸の何?」

「何って………」

「手だって繋いでくれない、キスだってしてくれない」

「それは………」

「智幸に好きって言われた事だってない!……どうして?」

「………」

智幸は黙ったまま私を見つめている。

「都合がいいバカな女がいるから丁度いいとでも思った?」

「リカ、それは違う!」

「じゃあ何で!? ………こんなに不安になるなら告白なんてしなきゃ良かったっ」

とめどなく流れる涙を流しながら私が言うと、智幸は諦めた様にため息を吐いて返した。




「わかった、全部話す」



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