映画が一本撮れそうな勢いである…。

 基本的には、デヴィ夫人はあんま裏表なくその時々の興味にいざなわれていろんなことを率直に言う感性の人であり、言及する事件や見解についてはデヴィ夫人の周辺にいる人々の意見に左右されやすそうである、という認識を持っている。須田慎一郎氏と片岡都美氏関連の発言を見るに、純粋な影響力要員ではなさそうで。

 こうやって、ブログで化粧品の宣伝をしているのを読むと、ある意味哀れでなあ…。そんなことさせんでも。

デヴィ夫人若さと美の秘訣 ~美白・保湿編~
http://ameblo.jp/dewisukarno/entry-10211197268.html#main

北朝鮮の人工衛星打ち上げ
http://ameblo.jp/dewisukarno/entry-10235856625.html

 コトの発端であるという、北朝鮮が打ち上げた物は人工衛星でござるの巻。デヴィ夫人はミサイルの専門家ではなく、北朝鮮の状況について必ずしも詳しいわけではない。ところが、デヴィ夫人自身は「日本は勝手に 「長距離弾道ミサイル」 「テポドン」 と言っているが、実際は、 「人工衛星」 である」と言い切ったまま、何の説明もなく人工衛星である前提で話がずんずん進んでいく。容赦ない。力強いというか、塹壕や鉄条網を無限軌道で踏み抜き突進する戦車のように持論を展開し続けるあたりはさすがだ。

 で、その後、これと北朝鮮訪問予定を明かしていたことが原因なのか、街宣をかけられたらしい。報道では、デヴィ夫人が植木鉢を街宣車に投げ、乗っていた右翼がデヴィ夫人のカメラを払い落とした、となっている。

デヴィ夫人と右翼団体がトラブル=北朝鮮問題めぐり対立か-警視庁
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009042000324


 明確に報じられた事実関係はこれだけなのだが、何かデヴィ夫人が報道内容に対して怒っている。

警視庁の発表は違います!
http://ameblo.jp/dewisukarno/entry-10245914101.html

「えっ!警察官がいても止められないの?」
恐怖と怒りの中、 近所迷惑を考え、
とにかく爆音を止めさせなければと、
私の存在を示す為に思わず、
足元にあった小さな植木鉢を咄嗟に抛っていました。


 これがまた良く分からない。許可を受けて街宣をかけるところまでは仕方がないが、デヴィ夫人がそれに反発して植木鉢を先に投げている時点で、常識的に考えれば罪に問われるのはデヴィ夫人の側である… その後、キレた右翼構成員がビデオカメラを壊した、というからあまり尋常な話でもなさそう。

 しかも、警察官が一部始終に介入していたとなるとお話は穏やかでない。まあ、現場に居た人が何を思ったかは分からないけど、右翼団体構成員よりデヴィ夫人を鎮静化させるために介入したとなると、もともとそういう判断を前提に警備をしていたのだろう…。逆に、この手の騒動にしたことは右翼団体からすると「してやったり」でもあるし、デヴィ夫人はせめて植木鉢を抛らなかったらなあ… と思うところでもある。

 デヴィ夫人は、街宣車に植木鉢が当たっていなかったから検分した警察が肩透かしされたようだ、という思い方をしているようだけれど、植木鉢を公道に向かって投げ込んだ時点でアウトなので、むしろ警察が変に事件化しないように双方に配慮して丸く収めようとした、と考えるのだが。

右翼の男の勘違い
http://ameblo.jp/dewisukarno/entry-10245926061.html

 その後、エントリーとしては若干首を捻る内容に仕上がっているのがこの物件である。確かに右翼も勘違いをしているかもしれないが、デヴィ夫人も相当香ばしい主張をしていて興味深い。

 この文章一個一個が非常にパワフルで、事実関係を体系的に知ることのできるネット世代からすると、どうしてこういう言動に結びつくんだろう、という関心が俄然湧く。ちょっと長いがコメントをインラインで寄せてみた。

北京から共和国の飛行機に乗った際に、
隣の席のロシア人と前席のフランス人が、
何を一心に見ているのだろうと、
機内誌を見て愕然としました。


 単なる北朝鮮のプロパガンダのリーフレットを読んで、帝国主義時代の日本が行った非道について悲しい思いをしたと述べている。過去の戦争において、日本は周辺国の国民に対して人道に外れた行動を取り、多大な迷惑をかけたことについては国民の良く知るところである。日本の戦前派、戦中派世代が中韓朝に大きい贖罪の念を抱いていることは、それだけ当時の日本人も残虐性には思うところがあったからだろうと私は思っている。

 で、その写真、どっから持ってきたの。機内誌を切り抜いてスキャンしたとかって話じゃないよね。誰かからもらったんだろうか。誰から? 加えて、その写真の真贋については外側からは良く分からない。日中韓3国共通歴史教材委員会などできちんと認定された歴史的証明が可能な写真なんだろうか、それは。

 その後も、デヴィ理論が続くのだが、意図してか、北朝鮮側が主張してきた内容に沿っているのが面白い。というか、デヴィ夫人、知識人としてどうというぐらいに良く勉強している。ひとつひとつの事案は独立しているように見えて、だいたい田中均氏らの筋で語られてきた北朝鮮融和論に近いのかなと思う。

①2002年9月17日小泉首相と金正日総書記は、
  「日朝平壌宣言」の国交正常化に署名し、実行する筈でした。
  両国国交に向けての話し合いの中に条件がありました。

  その条件を日本は満たしていません。


日朝平壌宣言
http://www.mofa.go.jp/Mofaj/kaidan/s_koi/n_korea_02/sengen.html

 これね。で、一般的にはこの共同文書が死文化した理由はいくつかあるが、第二回日朝首脳会談の物別れほか、語るだけで凄まじく時間を喰うものがある。デヴィ夫人は拉致被害者家族会の問題を気にしているようだ。実際、かの団体は何かと面白事情があるようなので何とも言いづらいが、どちらもこの宣言を守る意志がなくなった、という意味ではどちらが悪いとも言えない。実際、この宣言が履行されないから北朝鮮が国連に仲裁を申し立てた、という話も特にない。

いまこそ、日朝平壌宣言を両国が互いに履行する時期
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/news/071003_pyongyang/index1.html
外交敗北――日朝首脳会談の真実
http://www.amazon.co.jp/外交敗北――日朝首脳会談の真実-重村-智計/dp/4062135051

② ~5人の拉致された生存者を   
  2週間で返すという約束を 当時の副官房長官だった
  安倍晋三氏が強行に 日本のマスコミを操り 世論を煽り   
  拉致事件のヒーローとなり、日本の首相にまでのし上がりました。

  この2週間というのは、北朝鮮の親心だったのです。


 北朝鮮に親心があるとは知らなかったが、どうも安倍氏が嫌いなようである。安倍氏が日本のマスコミを操ったことになっているが、安倍氏にそんなことをする力があるなら彼が首相になったとき素人同然のお役人をマスコミコントロールの責任者にして御用マスコミを誰もが分かる形で指定して、それが弱小だったもんだから何の制御も効かなくなりマスコミにおおいに叩かれ支持率が急降下したということは起き得ない。

  第9条をもって軍隊を作るより、
  安倍氏、漆間氏、のようなネオインペリアリストの方が、
  よほど亡国に繋がる危険分子です。


 で、何故か漆間氏が登場である…。外務省機密費関連だろうか? 安倍政権では官邸入りしていない漆間氏が出てきて、実質的な安倍政権の外交政策指南役だった岡崎氏周辺の話が一切でないのが良く分からない。デヴィ夫人の周辺にいる人々は、結構間違った人物マッピングを元に影響力を行使させようとしているのかもしれない。

  初めて私が訪朝した時、 小泉元総理が約束した国交正常化を
  何故しないのか、 次の総理は何故 国交正常化を続行しないのかと
  よく聞かれましたが、今はもう聞かれません。
  完全にみくびられ、相手にもされていません。


 デヴィ夫人は日本国籍ではないし、北朝鮮に国賓として招かれたわけではないのだから、デヴィ夫人に要人がこのような外交的な質問をして、何らか見識を得ようとすることはまずないんじゃないかと思う。特定の外務官僚と情報交換がある、程度の話のように感じるが、その後の安倍政権も福田政権も現在の麻生政権も、実際には北朝鮮問題は大きな外交マターではなく、むしろ国内問題の延長線上という認識なのかも知れん。


  日本は4兆円とも言われる  戦争賠償金を支払いたくないのだと、
  日本の一部の方から聞きました。


 これも、何を主張したいのか、良く分からない。北朝鮮に4兆円も戦争賠償金があるのであれば大問題なのだが。一億歩譲って、そのような巨額の賠償金を払いたいと考える日本の有権者は多くはないだろう。さらに、日本の一部の方というのは具体的に誰なんだろうか。右翼団体に植木鉢は投げても、情報元は明かさないということなのだろうか…。

③25万トンの穀物支援をすると言ったのに、それも日本はホゴにしました。

 半分は送ってるけど、その後、拉致被害者の遺骨が別人のものであるという理由で反古にした形になっている。そういえば、このときの外務次官竹内行夫氏についてはデヴィ夫人はあまり触れない。

日本の北朝鮮食糧支援再開に期待 WFP代表
http://www.hanknet-japan.org/data/05_01_02a.html

④~
 聞くところによると  日本の外務省は、遺骨は無いという
 北朝鮮に対し、 遺骨がないと日本は承知しない、 世論がおさまらない、
 とにかく遺骨を送ってくれと、 やいやいと催促をしました。


 外交だから、これは事実だろう。きっとやいやいと催促したんだ。外務省が。

私は何度もブログでも言いましが、
拉致事件はあってはならないことだと思います。
私もテレビを見て悲しみの涙を流し続けました。
しかし、国交正常化に 拉致問題を関係付けるのは 次元が違うと思います。


 これはまったく同感で、本来次元の違う問題を同一に扱うから話がこじれているわけでね。あとは、日朝国交正常化を日本国民がしたいと思っているか、また、国交正常化のために発生するコストを日本は受容するつもりがあるのか、という話。まだその議論が煮詰まっていないので、拉致問題でわいわい言って、改正油濁法とか使いながらじりじりやっている、という感じだろうか。

大体、田口八重子さんの息子さんが、
金賢姫に今頃会えたのはおかしいです。
彼女は韓国政府に守られ、家庭を持って ソウルに住んでおり、 
”害務省”さえその気になれば、 いつでも実現でき、色々な事をきけた筈です。


 で、ここに来ていまの外務省批判。いやー。あんまり関係ないと思うけど。外務省は派閥争いしながら外交実務を仕切るという曲芸のような組織運営を長年続けている雑技団のような組織だから。でも、外務省キャリアひとりひとりはそれほど滅茶苦茶ではないような。

なぜ、アメリカ、イギリス、フランス、イラン、インド、パキスタン、 が
核を保有してもよくて、 北朝鮮だけが何故持ってはいけないのですか、
どの国がそう決めたのでしょう。 これはおかしいです。


 核拡散防止条約(NPT)に日本は批准してるんで、どの国が決めたとか言われても。NPT体制はけしからん、という話ならゴルバチョフ大統領によるソビエト連邦崩壊の過程から議論すべき。あんまデヴィ夫人はそういうことを考えてなさそうだけど。

核兵器不拡散条約(NPT)の概要
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/npt/gaiyo.html

これまでに、「宿敵」日本という言葉で、 日本が呼ばれることは、
ありませんでした。  こんな写真を載せられることになったのは、
安倍晋三氏の売名行為と懐刀である漆間巌氏の在日の人に対する
弾圧と迫害の結果です。 


 北朝鮮だけでなく韓国からも昔から宿敵呼ばわりされているのかなあとも思うが。で、ここでも漆間氏の悪口が。何をしたんだ、漆間氏(笑)。警察官僚として、個人の漆間氏が在日の人々に対して弾圧や迫害をした、とも思いづらい… そこまで言うのなら漆間氏の行状を具体的に指摘するべきだ、と考えるのだが。

気になるのは麻生総理が、この漆間氏をまた内閣官房副長官に
起用していることです。 この両氏に利用され操られた”マスゴミ”の結果です。
麻生総理まで国交正常化をしない。
弾圧と制裁しか叫んでいない麻生総理。


 北朝鮮関連は麻生政権の重要課題ではないから、従来の政府見解を踏襲しているに過ぎないと思うのだが、どうだろう。で、麻生氏と漆間氏がまたマスコミを操っているということになっているけど、そんなことならマスコミに誤読で叩かれ支持率一割低迷ということはまあありえなかったろう。

 デヴィ夫人のブログや発言記事を二年ぐらい遡ってつらつら読んでみたけど、どうも特定の官僚や政治家に操られているマスコミ、それに踊らされている国民、それとは違って良く分かっている私、みたいな科学の絵本に出てくる光合成の仕組み風の図式がばっちり脳内に出来上がっている気がする。

 いままでベンジャミンや田中宇などを見ていたが、今後もデヴィ夫人の怪筆は読んでいきたい気もする。酒を飲みながら、だけど。