「病は木から墜ちる」…外来化学療法13クール目8日目 | 駱駝ん町のブルース食堂

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お酒と音楽とカレー

序、

状況:大腸がん第4期。いわゆる「ステージ4」。

転移先:原発巣そばリンパ、肝臓2か所、肺。

2016年06月、大腸原発巣及びリンパの開腹手術。大腸管30センチ摘出。

07月の療養期間を経、08月より化学療法=抗がん剤治療開始。

プロトコル:mFOLFOX6+アバスチン。2週間で1クールを繰り返す。

初日の通院にて半日日帰り入院で吊るし点滴、終了後、風船点滴を装着し、帰宅する。

3日目夕方に風船点滴終了、通院にて針を抜く。

開始から一週間後の8日目に、検査と診察を行う。

 

現在、13クール目突入。

 

8クール中に行った効果測定が良好で、腫瘍マーカーは正常値圏内に下降。CTやPET-CTでは新たな転移~再発も認められず、転移先の肝臓と肺の残存腫瘍3か所も明らかに縮小が観察された為、現在の治療法の有効性が結論付けられた。

先ずは小さい方の肺の転移癌腫瘍を抗癌剤で潰す事を目標に、同治療法の継続を決断。

気持ちを新たに休まず、9クール目から続行開始。

 

一、

さて、クール開始後一週間経過の定例検査通院の日。

早いもので、正月ムードは完全に沈静化され、完全に日常平素に戻ってしまった、2017年は正月下旬。まあ、いつまでも正月だと、もう一寸やそっとでは体重が元には戻らない年齢なので、程々が宜しかろう。それにしても正月は太った。

 

と云いつつも、正月ならやっぱり寿司。

どうも回転寿司に入る癖が抜けず、でも「寿司なら油脂を使っていないから中性脂肪対策でヘルシーでよかろう」等とバクバク喰らって飲んで…まるで正月気分も抜けずに、気付けば2月も目の前ではないか。

コレステロール、トロは脂、炭水化物にアルコール…回転寿司も高級指向店では「ツマミ」で頼めたり「シャリ少なめ」も出来たりするのだが、安い大衆志向店だと、「シャリ少なめ」も「ツマミ=しゃり抜き」も無かったりするからなぁ。

まあ、鯛はめで鯛し、イクラは幾らでも入るし、あさり汁はアッサリしてるし…

 

二、

「その後如何ですか?鼻血はどうですか?」

 

抗癌剤治療の副作用で、鼻血は慢性化しているが、重篤な状態ではなく、一応は日常生活に支障のない圏内。

 

「耳鼻科は行かれましたか?あれ?耳鼻科は別の患者さんでしたね。

あんまり鼻血が酷いと、耳鼻科に行ってもらうんですよ。まあ、酷くなってきたら仰って下さいね」

 

そうなのか…

 

「検査結果は異常無しです。このまま来週の14クールも今まで通り行いましょう。

はい?”MCV”の数値ですか?」

 

MCVと云う項目が、2週連続で上限値をわずかに超え続けている。

赤血球の大きさに関連する項目らしいのだが、「酷くなると貧血症状が現れる」とネットで紐解かれていた。

 

「嗚呼、貧血ですか?全然そんな検査結果ではありません。

寧ろ普通の人以上に十分ですよ。此れも治療の影響ですかね~。

”MCV”は誤差もありますから、今回も気にする数値ではありません」

 

三、

と、此処で、入院前から気になっていた別の箇所の変な症状が、最近徐々に増幅してきている。痛くも何とも無いのだが、いい加減、相談せねばならない領域だ。

 

要するに股の髭の右脇辺りに水が溜まってきて膨らんでおり、最近では、腿から曲げたりすると「クチュクチュ」言うように為ってきたのだ。

痛みは全く無いし、支障もほぼ無いと云っていいのだが、放って置いて、闘病中の癌の様に又、重篤な状態になったら堪ったものではない。う~ん、心配になってきた…と云った状態なのである。

 

注射で水を吸い上げて済むのなら、其れに越した事もないだろうが、何科に行けばいいのだろうか。

 

「其れは、出っ張っているのなら、此処=外科の領域ですよ。

では一寸見せて下さい。」

 

ズボンを降ろす。

 

「嗚呼、此れは”*~★△ヘルニア”ですね~。」

 

は??

 

椅子に戻る。

 

「正式名称は”鼠径(そけい)ヘルニア”…いわゆる『脱腸』ですね」

 

だ、だっちょう!?…ですか???(・・;)

 

「どうしても腸が壁の外に出ようとしてしまうんですね、年齢と共に。まあ、痛みがないのなら命に別状はないので、現況、気にする程ではありません。

年に何万人も罹ってしまう様な、乱暴に言ってしまえば誰でも為ってしまう病気ですから、そんなに心配しないで下さい。手術は3~4日の入院で、30~40分もあれば終わってしまいます」

 

水が溜まって膨らんできたと思い込んでいたのは、「水」ではなく「腸」だったのか…

此れは衝撃だ。笑劇ではない。笑ってなどいる場合ではないのだ。

嗚呼、また手術か…(_ _;)

 

「しかし、今、治療中の病気を100とすると脱腸は”2”程度のものです。今の病気に比べたら、たったの50分の1程度のものでしかありません。

現況、支障が出ていないので、今の治療を何より最優先すべきです。しばらく放って置いても大丈夫です」

 

そうなのか…

手術をすると、術後の人間の回復本能に便乗し、悪性新生物=癌が暴れ出し、異常増幅を成し遂げる…だから、現況支障が出る迄には至っていない1/50の脱腸は切り捨てて、100の癌治療を優先するべき、そういう事なんだろう。

 

では、日常生活での留意点は何だろうか。

 

「先ず、重いものを持ち上げたりは避けて下さいね。」

 

要するに力が掛かるとNGという事なのか。

では、気になりだした腹回りの贅肉を落とす為の腹筋運動とかを丁度始めようと思っていたのだが、止めるべきか?

 

「嗚呼、駄目駄目!腹筋なんて以ての外です。

要するにですね、お腹に力が掛かると、どうしても腸が外に出ようとしてしまうんですね。

運動はとにかくウオーキングがオススメです。でも余り長時間歩き続けると、痛んでくる場合もありますから気をつけて下さいね~。

とにかく今の病気の方を治す事に専念しましょう」

 

と云いつつ、通院後、気付けば川沿いを3時間近くも歩いて、隣の隣の市まで行ってしまっていたのだから、仕様がない。

いい加減疲れたし、此れは如何なものかと、何とか見知らぬ超ローカルな駅に辿り着き、電車を乗り継いで帰ったのだから、全く困ったものである。