序、
状況:大腸がん第4期。いわゆる「ステージ4」。
転移先:原発巣そばリンパ、肝臓2か所、肺。
2016年06月、大腸原発巣及びリンパの開腹手術。大腸管30センチ摘出。
07月の療養期間を経、08月より化学療法=抗がん剤治療開始。
以下は、「入院期:2016年06月01日~30日の大腸原発巣及びリンパの摘出手術入院生活1か月の追憶」を記したものである。
七、大腸癌原発巣の摘出手術当日#3「手術直後の追憶」
七の一、
手術室。先ず、全身麻酔を背中から注入。手術前にレクチャーを受けた様に、横向きに為り、膝を抱き背中を丸めた格好で針を刺される。更に、術後用の痛み止め注入管の針も敷設された。
手術台は想像を絶する幅狭さ。普通に寝ていたら、墜落必至のギリギリの幅しか無い。
重量級のお方は大丈夫なのだろうか?
そして何故か談笑しながら、股間の髭剃りをして頂く…
此処で完全に記憶が途絶えた。
七の二、
ガラガラと病室に運ばれる間に目が覚めた。
看護婦さんか叔母だか覚えていないが、無事成功した旨を伝えられる。
そうなのか…、痛みは愚か、何一つ覚えていない間に終わるものなのか…
此処で突然、1シーンだけプレイバックが脳裏に蘇った。
口に何かを詰められていたらしく、違和感でもがきたくなる目覚めを一瞬体験したのだ。
手術を受けているという自覚すら無いから、一体何が起こっているのか分からないが、非常に理不尽な異常な状況に陥れられた感覚で、暴れたく為った記憶がある。
いや、実際、わめき散らしたり吐き出そうとしたのかも知れない。全身麻酔が効いているので、暴れられなかっただけで。
しかし、再びストンと記憶が途絶え、今は病院の廊下を運ばれている。ガラガラと。
脚が異常に気持ち悪い。
伸ばしたいのに伸ばせないのだ。如何したものか。
病室に入ると、立ち会った叔母が、「腸管を30センチ摘出して持たせてもらった」と自慢気に話す。先生が直前に仰っていた事を思い出す。
「まあ、大腸は1.5メートルくらいはありますから、5分の1、大して影響ないですよ。大丈夫です」
足が伸ばせない旨を看護婦さんに伝えると、普通に伸びているから大丈夫だと仰る。どうやら麻酔の影響の幻覚?の類らしい。
しかし、此れが本当に気持ち悪くて、このまま果たして眠れるのだろうかと心配になる程だ。又もや藻掻き暴れたい衝動に駆られるのだが、身体は全く動かない。
麻酔が切れると痛むので、鎮痛剤の繋がる背中に刺さった管に、手動で注入する様、指導される。後は、身体に力が入らない由、痰の排出が大変だが頑張る様にと。
すっかり忘れていたが、手術前の一週間で、病室で合間を見ては呼吸練習器?で腹式呼吸訓練をした事が思い出された。
そして皆様が去って行き、相部屋だが、一人取り残された。
ただでさえ身体がまともに動かせない其の上、身体中からありとあらゆるものが10本くらい生え、文字通り身動きが取れない。足が伸びなくて異常に気持ち悪い。
七の三、
そうこうしている内に、自然と眠ってしまった様だ。
脚の伸びない違和感は自然に解消されたが、脚に巻き付くマッサージ機が、暑苦しい上、非常にうざったい。暴れたい…。何故にこうも脚なのか…。
ちなみに、2日目だか3日目の深夜に、余りのうざったさに外してしまったら、夜勤の看護婦さんに見つかってしまい、叱咤された。
「此れで血栓でも出来たら大変な事なんですからね!」
さて置き当日深夜。
空っぽの筈の腹の中=内蔵だが、肛門から何かが少しばかり排出された。
尻の穴にも排便用の管が入っているので、横漏れした様だ。此れは手術したところから血が出たに違いない、出続けたらどうしよう…。すかさずナースコールして調べて頂けば、出血はなく、便の塊がコロッと出ただけだと仰る。
え?空っぽな筈なのに出るものがあるのか?
空っぽでも、内臓が動いていれば、老廃物も排出されるしガスも発生するので、安心する様に云われた。そういうものだったのか…。
傷口の痛みについては忘れてしまったが、苦痛に悶え苦しむことはなかった筈だ。
こんな感じで深夜、何となくぐっすり寝てるんだか寝てないんだかな状態ではあるが、1日目を終えた感じであった。