内閣総理大臣鳩山由紀夫様

 私は政治についてはまったくの素人ですが、米軍普天間基地移設問題に限っては、対立する両者の双方が納得できる解決策を思いつきましたので、そのことを総理にお伝えしたくて一筆啓上させていただくことと致しました。
 しかし私のような素人が思いつくようなことは、既に総理も思いついておられるのかもしれません。そしてそれを表明する時機を窺っておられるのかもしれませんが、いよいよその表明の時が迫ってきています。アメリカは18日までに回答するよう求めています。いよいよ決断の時です。
 普天間基地の移設先として、アメリカは自民党政権との間で合意のあったキャンプシュワブを、沖縄県民は県外または国外を考えていて、一方を立てれば他方が立たない板ばさみの状態です。アメリカを立ててキャンプシュワブに決めると社民党が離脱して連立政権が崩壊する恐れがあり、沖縄県民を立てて県外または国外に決めると日米同盟そのものに亀裂が生じる恐れがあります。
 そこで両者を立てる方策として、移設先を暫定的にキャンプシュワブとし、キャンプシュワブに移ってから次の移設先を模索するというのはいかがでしょうか?いったん移設すればそこが永久の移設地になるという固定観念が板ばさみの原因です。そこは柔軟に、キャンプシュワブからも次の移設先を探すことはできるのではないでしょうか?このように決定すれば、アメリカと沖縄県民の双方を立てることになるのではないでしょうか?
 しかしこのような双方を立てる解決策は、既に聡明な総理ならお考えのことかもしれません。それだったら私の出る幕ではありませんが、もし双方が納得する解決策を模索すると言いながら何も妙案をお持ちでないのなら、このような解決法があるということを申し上げたいと思います。くれぐれも、どちらか一方に偏った決断だけはなさらないよう、日本国民を代表して切に願っております。

                            ユニオン太郎
 
 労働基準法では、労働者は全ての企業において有給休暇が取得できることになっていますが、一般に労働組合のない中小零細企業においては、ほとんど取得することができないのが現実です。
 その理由は、そうした企業の経営者が、法律で明記されているにもかかわらず、そのような労働条件を整備しなければならないという意識に欠けているからです。そうした経営者にとって、労働者とは会社に儲けをもたらすための道具であり、できるだけ多く会社に儲けをもたらすためには、有給休暇を与えることなどとんでもないという考えでしょう。そうした会社は、社員の数も経営規模ぎりぎりの人数で回しており、一人でも休むと業務に支障をきたすような状態であることから、有給休暇などとんでもないと経営者は考えているのでしょう。
 そのような会社に限って、社員が退職すると言い出すと、社長はあわてて引き留めようとします。一人でも欠けると会社の業務が回らなくなるからです。しかし社員が自発的に退職することは社員の自由であり、それを無理やり引き留めることはできません。だから、せめて残りの者に業務を引き継いでから退職してくれ、と社長のほうから社員に願い出るのが関の山です。しかしそのような業務の引き継ぎは、退職しようとする者が遵守しなければならない法的義務ではありません。退職する者が業務の引き継ぎをするかどうかは、当事者の自由意思に任されています。そのような当事者の自由意思によって会社の業務が支えられているということ自体が、その会社が抱えている本質的な危機状況といえるでしょう。
 こうした危機状況を経営者が打開できる方策があります。それは、社員が普通に在職しているときに、有給休暇を取得できるようにしておくことです。社内で有給休暇を取得できるようにしておけば、社員は実際にその権利を行使して時々休暇を取るようになります。そうすれば、その社員は休むに当たって、自分の業務を自発的意思で別の社員にきちんんと引き継ぎします。そしてその別の社員が、休暇を取った社員に代わって、その業務を支障なく代行します。このように、日頃からその社員の業務を別の社員が代行できるような体制にしておけば、その社員が引き継ぎなしに突然退職したとしても、日頃からその社員の業務を代行していた者がその後ずっと担当していけばいいのですから、会社の業務に支障を来たすようなことはないでしょう。
 しかしこうしたことを自覚している会社経営者が、果たしてどれだけ存在しているでしょうか?労働者が有給休暇を取得できないようにしている会社の経営者は、決してこのようなことを自覚していないでしょう。自覚していれば、有給休暇を取得できるようにしているはずです。労働者が有給休暇を取得できる会社を増やしていくためには、こうしたことを自覚する経営者を増やしていく必要があります。そのために、以下のような闘争を行なうことを私は提案します。
 労働者が現時点で雇用されている企業から、それより労働条件のいい企業へ転職できる機会に恵まれたと仮定します。そのときに、業務の引き継ぎをしないで突然の退職を申し出ることです。経営者は慌てふためくでしょう。そこで、次のように言い残して退職していくことをお勧めします。
 「普段から有給休暇を取得できるようにしておけば、その休暇を取るときに業務の引き継ぎをしておけたのに、そのような休暇を取れないようにしているから、社員が突然やめたときに困ることになるんですよ。今回にことに懲りて、これからは有給休暇を取得できるようにしてください。」
 このようなことを言い残された会社は、本当に業務が回らなくなって倒産に追い込まれるか、あるいは危機を乗り越えて有給休暇を取得できる企業に再生するか、のどちらかだろうと思います。いずれにせよ、できるだけ多くの者がこうした闘争を積み重ねることよって、有給休暇を取得できる企業が増えていくことでしょう。
 こんにちまでの世界の歴史は、民主主義が発展してきた歴史です。最初に民主主義が誕生した西欧の歴史を振り返ってみると、かつての絶対王政に時代には、国家は国王の占有物でした。人民は国王に支配されていました。そして国王の地位は世襲され、人民に国王を選ぶ権利はありませんでした。そのような状態を人民の側が間違っていると主張して王政を打倒し、国民が選挙によって元首を選べるようにしたのが、民主主義国家の誕生でした。
 この民主主義はいまだ発展途上にあります。このたび日本で総選挙があって、長年続いた自民党政権から民主党政権へと政権が交代しましたので、日本では民主主義が成熟しているかのように見えますが、まだまだ充分ではありません。何故なら、完全に民主主義が成熟した社会というのは、すべての人が豊かに幸せに暮らせる社会でなければならないと考えるからです。ところが今の日本は格差社会であり、すべての人が豊かに幸せに暮らせる社会ではありません。民主党政権になったことで少しは良くなるでしょうが、上からの政治的恩恵だけでは、すべての人が豊かに幸せに暮らせるようになるのには、まだまだ充分ではありません。
 自由主義経済の国家の構成単位は会社企業です。そうした国家は今のところ、国家という枠組みにおいては民主主義が定着していますが、その実質を構成する会社企業のそれぞれにおいては、民主主義とは正反対の、かつての絶対王政国家のような独裁制のままです。
 国家における民主主義とは、その国家の構成員である国民が、国家の長である元首を選挙によって選ぶことができる制度です。その考え方を会社企業に当てはめてみると、会社企業の構成員である社員が、その会社の社長を選挙によって選ぶことができるかどうか。果たしてそのような制度を採用している会社がこの世にあるのかと問うてみると、ひょっとしたら私が知らないだけで、どこかに存在するのかもしれませんが、社員が社長を選挙によって選ぶ会社などというものは、考えたこともない人がほとんどでしょう。しかし民主主義の名に値する会社企業とは、そのようなものではないでしょうか?
 今この世に存在する会社企業は、社員を自分の支配下に置こうとする社長と、そうした支配を受けようとする社員との対立関係にあります。それは、かつての絶対王政国家が、人民を自分の支配下に置こうとした国王と、そうした支配を受けていた、あるいは受けようとしていた人民との対立関係にあったことに対応しています。そうした絶対王政の支配に対する抵抗運動として始まったのが市民革命でした。だとすれば、社員を自分の支配下に置こうとする社長に対する抵抗運動として始まっているのが労働運動であり、その労働運動が、会社企業における独裁制を打倒して、会社企業における民主主義の体制を創設するための「市民革命」として発展させていかなければならないと考えるのは妥当なことではないでしょうか?
 会社企業における民主主義の体制とは、社員が社長を選挙によって選ぶ体制です。社長の地位は社員の最大多数の意向によって保証されなければなりません。社長が社員の意向に背くようなことをすれば、選挙によってその地位を奪えるようにしなければなりません。
 このような会社企業における民主主義は、会社の構成員である社員が、同時にその会社の株主であることによって成立することが可能になります。社員は、株主となることによって社長を選挙する権利が発生します。
 現今の会社においては、社員と株主は別々の存在です。経営者である社長が社員の意向に副わなくてもその地位に安住していられるのは、社員が株主でないからです。社員と株主の存在が分離しているがゆえに、経営者は株主の意向を考慮するだけでよく、労働基準法を遵守せよという社員の意向に副うことのない会社運営が可能となるのです。
 それゆえ民主主義の会社とは、社員が株主となって社長への選挙権と被選挙権がある会社だということです。このような会社が、今の自由主義の経済社会に一つ出現するとします。同業種で、民主主義の会社と従来通りの独裁制の会社とが自由競争をするとしたら、どちらの会社が競争に勝てるでしょうか?競争に勝てるのは、一人一人の社員の働きぶりがいいほうの会社です。どちらの会社のほうが社員の働きぶりがいいでしょうか?一方の会社の社員は給料をもらうために働くだけで、昇進するにしても限りがあります。ところがもう一方の会社は、頑張って他の多くの社員に評価されるようになれば、選挙によって社長になれる可能性のある会社です。前者よりも後者のほうが、社員の勤労意欲の度合いが遥かに高いのは火を見るよりも明らかであす。そのような民主主義の会社は、従来通りの独裁制の会社を次々と打ち負かしていけます。選挙制度を導入した民主主義の会社が社会全体の中で優勢になっていきます。そのようになっていくことで、従来通りの会社で自分の地位にしがみつこうとしていた経営者は次々と淘汰されていき、逆にそれまで従来通りの会社で報われなかった労働者が少なくなっていって、民主主義の会社において活き活きと働けるようになる労働者が増えていくということです。
 ところが、どこの世界に、自分の地位が危うくなるような選挙制度を自分の会社に導入しようとする経営者が現れてくるでしょうか?今の経営者は自分の地位にしがみつこうとする連中ばかりです。今の経営者には、絶対にこんなことは期待できません。そこでこのユニオン太郎が、そのような会社を一つ設立してみることにしました。実は私は、民主主義の神様に遣わされた妖怪なのです。私がそのような会社を一つ作れば、それによって企業民主主義の革命運動が始まることになります。それまでの国家民主主義の流れを受け継いで、会社の中に民主主義制度を導入していく企業民主主義の革命運動が始まることになるのです!