Beyond Despair -56ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「こうやって作ったんだよ」

ライトは槍を握っている右手を俺に突き出してくる。

俺は目の前で起きた事を理解できないでいた。

魔術で武器を作り出す事は出来ない。

魔術はあくまで術であって何かを作り出す事は出来ないのだという。

だとすると、ライトは魔術師では無いと言うことだ。

「お前……その力は何だ……」

俺がそう問いかけるとライトは口元を歪ませる。

そして再び黒いオーラが彼女の右手を被った。

「悪魔憑きって、聞いたことあるか?」

「悪魔憑き? 悪魔に憑かれたみたいに荒れ狂う奴の事だろ……」

「あぁ、確かにそれも悪魔憑きだな。でもさ、私の言ってる悪魔憑きってのは少し違うんだよ」

ライトは手に持った槍を肩に担ぐ。

「なぁお前、悪魔って本当に居ると思う?」

「居る、のか……?」

俺がそう言うとライトは不気味な笑い声を上げる。

「居るよ? 悪魔は人間の願望を叶えてくれる、言わば願望器その物だ。私はあの子が死んだ時〝願望器(あくま)に出会った。そしてその時願った、コイツらを殺し尽くす程の力が欲しいって。魔力も無い私は何も出来ない無力な人間だったから、だからライアンも守れなかった」

ライトは自身の右手に視線を向けると、どこか悲しそうな顔をした。

「だから私は悪魔憑きになった。ライアンを殺した醜い思念の残骸を皆殺しにする為にな」

「お前……」

そんな会話をしている時だった。

前の方からヌチャヌチャと言う音が聞こえる。

俺はとっさに視線を前に向ける。

すると炎上する車の方から目の前に倒れている化け物と同じ形をした奴らが数体コチラにフラフラと向かって来ていた。

「まだ居たのか……!」

俺は思わずその場から一歩下がる。

こんな時、魔術騎士団は何をやっているのだろうか。

こう言う時の為にある機関の筈なのに。

するとライトが俺の目の前までやって来た。

迫り来る化け物をじっと見つめている。

そして何故か嬉しそうな顔をしていた。



/続く



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「な……!」

そこには予想外の化け物の姿があった。

頭の部分から真っ赤な液体をドロドロと流している。

よく見ると、脳天の辺りにナイフの様な物が突き刺さっていた。

化け物は体をビクビクと痙攣させている。

俺は何が起きたのか理解できないまま、その化け物を呆然と見つめてしまう。

「死んだ、のか?」

俺はフラフラと立ち上がる。

すると体を痙攣させていた化け物が腕の鎌を再度振り上げる。

「ま、まだ生きてんのかよッ!?」

化け物は何かうめき声を上げている。

苦しそうなその声には一瞬、哀れみすら感じてしまう。

化け物はそんな声を上げながら俺に鎌を振り下ろす。

と、その瞬間だった。

俺の顔を何か黒い棒の様な影が横切った。

そしてその影は化け物の心臓部分に突き刺さる。

棒、ではなく槍と言った方が正しいかもしれない。

化け物は槍が刺さっている部分から噴水の様に血を吹き出した。

そしてそのまま地面に倒れ込む。

今度こそ死んだ、そう確信した。

俺は後ろに顔を向ける。

そこにはさっきから何の変化もないライトが立っていた。

「お前、死にたいのか?」

と、低い声でライトは俺を睨んでくる。

「これ……お前がやったのか? でもお前槍なんてどこにも……」

ナイフだって持っていなかったはずだ。

だとすると彼女はどこから武器を取り出したのか。

「あぁ、持ってないな。私はただ作り出しただけだから」

「作り出したって、何を……」

俺の呟きにライトはニヤっと不気味な笑みをこぼす。

そして黒いオーラが滲み出ている右腕をゆっくりと上げる。

すると黒いオーラが彼女の右腕全体を被う。

ライトは右腕の拳を握り水平に振り払った。

そして振り払った直後、彼女の右手には黒い槍が握られていた。

先は鋭く、不気味な形をしているその槍は悪魔の武器かと思ってしまう程だ。



/続く



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その姿は本当に黒くて、目だけが血の色を連想させる赤色だった。

もう体が動かない。いや、足が動かない。

イヤな汗が背中を濡らしているのが分かる。

〝これがアヴェンジャー……〟

テレビのニュースなのでは見たことはある。

しかし、本物をこの目で見るのは初めてだった。

アヴェンジャーは不気味に輝く赤い目で俺を睨みつけてくる。

「……!」

俺は思わずその場に尻餅を着いてしまった。

〝殺される〟

炎上する車の方に何とか視線を向ける。

そばに倒れていた女性の姿は無かった。

もう逃げたのだろうか。

「は、はは……」

つい笑ってしまう。

何かが可笑しい訳じぁない。

この今の状況が余りにも急展開すぎて、笑ってしまっているのだろう。

視線を目の前の化け物に向ける。

化け物は赤い目で俺を見下ろしている。

そして、鎌状の腕を振り上げた。

「や、めろ……」

心臓の鼓動が急速に早まる。

これが死の恐怖と言うものなのだろうか?

化け物の黒鉄の鎌が不気味に光る。

そして次の瞬間、黒鉄の鎌が俺の首を切り落とそうとばかりに振り下がってきた。

俺は両目を閉じて、頭を抱える。

これで俺は死ぬのだろうか?

アヴェンジャーなんて化け物の話、よその国の話だと思っていた。

自分達は無関係なのだと思っていた。

そんな絶望感に浸りながら、俺は自分に望まない死が訪れるのを待った。

しかし――。

「……?」

いつまで経っても俺に死は訪れなかった。

目の前の化け物は確実に俺を殺そうと鎌を振り上げた筈なのに。

俺はゆっくりと目を開ける。

そして居るであろう目の前の化け物に恐る恐る視線を向けた。



/続く



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