Beyond Despair -43ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「つか、アイツ等大丈夫なのか? もし座れてなかったら、第三エリアに着く頃にはヘナヘナの紙くずみたいになってるぞ」

「あぁ、それなら大丈夫。エレナは龍二と一緒に座る事が出来たってメールが来たから」

「そっか……って、坂口は?」

「アイツは音信不通、座れなかったんでしょうね。まぁでも、グイグイ押されればあのお腹も少しは引っ込むでしょ」

「お前、結構酷い事言ってるって自覚してるか……」

「してないし、する気も無い。少しは痩せろっての」

坂口本人がここに居なくて良かったと、心から思う。

「それで、トランプやるの?」

学生鞄からトランプを取り出しながら火野川は俺にそう言った。

「やっても良いけど、何すんだよ?」

「んー、そうね。じゃ~ババ抜きしない?」

「二人でババ抜きだぁ!? 四人ならまだしも、二人でやるゲームじゃねーぞッ!」

「べ、別に良いじゃないッ! 出来なくは無いんだしッ!」

「あっという間に勝負ついちまうだろーがッ!」

俺はため息をしながら窓の外に顔を向ける。

が、その時だった。

火野川が俺の左頬をグイグイと引っ張ってきたのだ。

「ぐに~、にゃにすんだ~!!」

「良いからババ抜きするのッ!!」



ベチン、と勢い良く引っ張られていた左頬が離される。

そして火野川はトランプのカードを手馴れた手つきで切る。



/続く



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第三エリア、ナイトタウン行きの列車の中。

俺はぼんやりと窓の外を眺めている。

つい先ほど、何かカードの様な物が鳥の様に散って行ったのを見たが、あれは何だったのか……。

「ちょっと、護! 聞いてるの!?」

耳元で火野川の怒鳴り声が聞こえる。

俺は顔を彼女に向けた。

「え、何か言ったか?」

「あのね……さっきから声かけてるのに完全スルーって何よッ!」

「え、マジか……。そりゃ……悪かったな」

火野川は呆れた様にため息をする。

そんなに声を掛けられていたのだろうか。

正直、全然耳に入って来ていなかった。

「そんで? どうかしたのかよ」

「第三エリアまで着くのにはまだ時間があるからさ、トランプでもしないかって話よ」

「トランプ? 俺とお前だけでか?」

「仕方ないじゃないッ! エレナや坂口達とは同じ席になれなかったんだし」

そう、そうなのである。

話を遡る事二十分前の事――。

第三エリア行きの列車に乗り込んだは良いものの、俺達五人は一つ重大な事を忘れていたのである。

第三エリア、通称「ナイトタウン」は新都市の人間には大人気のエリアである事を。

その為、列車の席は予約しない限りは絶対に五人皆で仲良くオスワリも出来ないのである。

エレナや坂口、龍二等三名は押し寄せる乗客に流され、別の車両に行ってしまったのだ。

そして、この車両に残されたのは俺と生徒会長。

俺達は何とか二人並んで座れる席を見つける事が出来た。

そして今に至る訳である――。



/続く



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「……?」

何故か体をガクガクと震わしている。

そして次の瞬間、アイネは運命の輪のカードをビリビリと破き始めた。

細かく、補強出来ないほどに破く。

そしてゆっくりと私に顔を向けてきた。

「ダメ、絶対ダメ」

小さい声でそんな言葉をモジモジ呟いている。

「はぁ? ダメって何が」

「ダメな物はダメッ! 出会い?ハハ、出会いッ!? 何よそれ絶対ダメでしょッ!」

テーブルをバンバン叩きながらアイネは叫ぶ様に言った。

正直、恐怖をかんじてしまう。

私は起き上がり、アイネから身を引く。

「ライトをどこぞの馬の骨ともしれぬ猿なんかにやれるかっつーのッ! 大体、ライトは私の彼氏なんだから、人の奴横取りすんなよクソがァァァァァッ!」

荒ぶるアイネを見つめる。

こうなってしまったアイネには、何を言っても仕方がないのは知っている。

アメリカに居た時も、私に話しかけてくる男の兵士を何人もこう荒ぶりながら殴りつけていた。

戦闘時にはあまり成功しない魔術も、その時には成功する確立が高かった覚えもある。

と、アイネは泣き叫びながら今度は残ったタロットカードを全て拾い上げる。

そして窓を開け、外にタロットカードを全て投げ捨てた。

「って、おいお前ッ!」

さすがにこれはマズイだろうと私は窓から顔を出す。

投げ捨てられたタロットカードは、まるで鳥の様に空へと散って行った。

「ゲェ……」

ポイ捨てなんてレベルじゃ無いと思う。

私は頭を引っ込め、窓を閉める。

「ガァアアアアッ! タロットなんて占い誰だし考えたのッ!! おかげでクソな結果が出ちまったじゃねーかァァァァァッ!! 何、運命の輪? 運命の輪ァァァ?ハハ、そんな運命は私がぶち壊してやんよォォォォッ!!!」

「……」

言葉をかけようと思ったけど、やめておこう。

今のアイツに、人の言葉は通用しないからな。

私は音楽プレイヤーを取り出し、イヤホンを両耳に入れる。

こんな猛獣レズ女の叫びなんざ聴きながら眠れるか。

騒ぐアイネに背中を向ける様に再び横になる。

まったく、たかが占いで騒ぐなって話だ。

目蓋を閉じて、私は眠りに入る。

第三エリア、通称「ナイトタウン」に着くまでまだ時間はある。

その間、少し睡眠をとっておこう。



/続く



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