Beyond Despair -42ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「お前ッ! 魔術とか勉強とかのしすぎで常識って言うねじの一部分がぶっ飛んでるんじゃないのかッ!?」

「なッ! 急に大声上げて何言い出すかと思ったら、何よその失礼な物言いはッ!?」

いや、絶対吹っ飛んでるだろッ!

何だよ、万能な人間はどっか抜けてるとこがあるって言うけどこの事かッ!?

俺はつい席から立ち上がり火野川を見下ろす。

「失礼でも何でもないわッ! お前の為に言ってるんだぞ俺はッ!」

すると火野川は負けんとばかりに席を立つ。

そして俺に顔をグイっと近づけてくる。

「だからッ! アンタはさっきから何を訳の分からない事を言ってるのよッ!? 常識のねじが吹っ飛んでるのはアナタしゃないんですか、神崎護さんッ!!」

お互い鋭い目付きで睨み合う。

と、そんな時――。

「あの、お客様?」

火野川の背中の方から女性の声が聞こえる。

俺達は声のした方へと顔を向けた。

そこには紫の帽子を被った女性車掌の姿。

「席を立って騒がれては、他のお客様へのご迷惑になりますので……」

苦笑いをしながら女性車掌は俺達にそう告げる。

そう言えば、周りの奴の事なんて全然気にしてなかった。

俺はゆっくりと周りの乗客を見渡す。

全員、俺と火野川の方をジドっとした目付きで見つめていた。

「あ、あははは……いや、お騒がせしてすみません」

愛想笑いで周りの乗客にそう呟く。

それでも乗客の表情はまったく変わらない。

俺は視線を火野川に向ける。

すると火野川も俺に視線を向けてきた。

目だけで、この状況の突破する方法を話し合う。

と、火野川は何か決意したかのようにコクっと頷いた。

「乗客の皆さん、本当に申し訳ありません」

火野川は乗客の奴らに頭を下げる。

俺もそれに続く様に頭を下げた。

さすが火野川、こう言う時には頼りになるんだ――。

「この馬鹿男が何を思ったのか急に暴れ出してしまって……」

「って、テメーは何全部俺が悪いみたいに言ってんだよッ!?」

再び火野川に向き直る。



/続く



にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!  

「え、何よ急に……」

苦笑いしながら少しうろたえている火野川。

俺の反応が意外だったのだろうか。

しかし、こんな美味しい話に乗らない男は居ないだろう。

俺はついヒッヒッヒと笑ってしまう。

その不気味な笑みに火野川は俺から身体を少し遠ざける。

「あ、アンタ……何か変な事考えてない?」

怪し物を見る目で彼女は俺を見つめてくる。

だが、そんな目で見られても今の俺には何ら効果は無いッ!

「別にぃ? それより火野川さん、本当に敗者は勝者の言うことを〝何でも〟聞くって事で良いんだよなァ?」

鼻息を荒くしながら火野川に最終確認を行う。

俺だってこれでも人の子だ。

最後に確認くらいはしないとな。

「……アンタ、私に何かさせたい訳……!!」

「ヒヒヒ、嫌だなそんな目で見るなよ生徒会長~。これはアンタが言い出した事なんだぜ?」

俺の言葉に火野川は頬を赤くする。

今更自分が愚かな事を言ったと自覚したのか。

「んでぇ? 本当にそれで良いんですね?」

俺は本当の最終確認を行う。

ここで火野川が拒めばそれで良い。

俺だって別にこんな勝負、ガチでやりたいと思ってる訳じゃない。

まぁ、五割は本気でやりたいと思う所だが……。

でも俺は、彼女にこう言う勝負の危険性を理解して貰えればそれで良い。

コイツも何だかんだで女の子だ。

女の子が男に「何でも言うこと聞きます♥」なんて言ってみろ。

その子が一体どういう目にあうかは誰にでも分かるはずだ。

「……ねぇ、護」

顔を下に向けながら火野川は小さい声で俺に声をかけてきた。

まぁ、答えがNOって事は分かってますけどね。

俺はホッと息を吐く。

「んじゃ、勝負は無しの方向で――」

「私が勝ったら、今日一日、私の言うこと何でも聞きなさいよ?」

「――はい?」

一瞬、火野川の言っている言葉の意味が分からなかった。

って事は何か? コイツはこの勝負の危険性を理解していなって事かッ!?

俺はゆっくり火野川に顔を向ける。

彼女の表情は至って通常。

いや、頬は少し赤いけど。

「あの……ツンデレ会長、アナタは自分の吹っ掛けた勝負の危険性を理解していないのでしょうか?」

「危険性? 何よ危険性って」

……コイツは学院では成績優秀の優等生。

そんな奴がこの勝負の危険性を理解していないだとッ!?



/続く



にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!  

そして一枚一枚、交互に俺と自身の膝に置いていく。

「よし、んじゃ同じカードはここに置いて」

そう言いながら学生鞄を俺との間に置いた。

俺はため息をしながら膝に置かれたカードの束を手につかむ。

そしてダブリのカードをポイポイと鞄の上に捨てていった。

「ほい、準備出来ましたよ?」

「うっしッ! こっちもオッケー」

何故か嬉しそうな火野川を見ながら俺は何度目か知れぬため息をする。

「ちょっと、さっきから何ため息してるの?」

「だってよ、ババ抜きって二人でやるゲームじゃねーんだぜ? 逆に二人だと楽しさが減ると言うか何というか……」

因みに、不幸な事にジョーカーのカードは俺の手札にある。

つか、ダブリのカードを捨てる時に気になっていたのだが……。

このジョーカー、他のカードに比べて物凄く傷ついているのである。

まさか、これを目印とかにしてるとかねーだろうな……。

「良いの良いのッ! ねぇ、ただやるだけでも何だしさ、勝負しない?」

悪魔のような笑みを浮かべながら火野川は呟く。

「し、勝負って、一体どんな?」

「ん~、負けたら何でも言うことを聞く、ってのはどう?」

やっぱりそう来ると思った。

つか、実はコイツ隠れオタなんじゃないか?

俺はつい火野川をジド~っと見つめてしまう。

「な、何よッ! その怪しい物を見る目はッ!?」

「いや、アニメや漫画とかでよくあるシチュエーションだからさ……。まさか現実でこんな事を言う奴が居るとは予想外すぎて」

「別にアニメとか漫画の真似してる訳じゃないわよッ! その方が燃えると思っただけ」

プイっと顔を背けながら火野川はダブリのカードを鞄の上へと捨てていく。

しかし、何でも言うことを聞く……か。

つまりそれって、今日一日この生徒会長殿を好きにしても良いって事だよな?

好きにして良いって事は……。

「良いな、その勝負ッ! 乗るぜ火野川愛花ッ!」

人差し指をビシっと彼女に向ける。



/続く



にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!