部屋の中に人影が二つ。
一つは部屋の隅っこに黒い鎖で縛れられた少女、もう一つはそんな少女を呆然と見つめるトンガリヘッドの男の影。
男は今だ目覚めぬ少女に寄り添い、優しく頬を撫でる。
「何でこんな嬢ちゃんが持ってんだかな。ホント、神様ってのは悪趣味って言うか」
誰にこぼす愚痴でもないその言葉で、エレナは眉を微かに動かした。
そしてゆっくりと目蓋を開ける。
「あ……れ……?」
まだ意識が朦朧としているのか、エレナは男に気づいていない。
自分が今、どうしてこうなっているんかさえ理解出来ていないだろう。
男はクスっと笑いながら触れている頬を少しだけムニっと引っ張る。
柔らかい少女の頬は男の指に引かれるがまま伸びていた。
「んむ~」
可愛らしいエレナの声に男はまた笑ってしまう。
そして勢いよく、ゴムを弾くようにエレナの頬から指を離した。
「いたぁ」
ムニンとモチモチした頬が元の形に戻る。
それと同時にエレナの意識はハッキリとしたのか、目の前の男に視線を向けていた。
「よう、目が覚めたかい嬢ちゃん」
軽い口調で語りかけてくる男を少女は弱々しい視線で見つめている。
「こ、ここはどこなんですか?」
「ここはー、俺の隠れ家って所か」
男は部屋の周りを見渡しながらエレナの問いにそう答える。
部屋は明かりが付いておらず、とても薄暗い。
だがどこかのマンションの一室である事は理解出来た。
「っと、自己紹介がまだだったな。俺はグリードってんだ、よろしくな嬢ちゃん」
そう言いながら丁寧にお辞儀をするグリート。
そして自身を凝視するエレナの目の前に胡座をかいて座り込んだ。
「んで、嬢ちゃんはなんてんだ?」
「……答える気があると思ってるんですか?」
ムッとした声音の反発にグリードは何度目かの笑い声を上げる。
どこがおかしいのか、とエレナは目の前の男を睨みつけた。
何とか逃げ出した所だが身体は黒い鎖で縛られており、立ち上がる事すら出来ない。
「まぁ、嬢ちゃんの名前なんざどうでも良い事だがな。用があるのは嬢ちゃんの〝耳〟なんだから」
と、グリードは宝物にでも触れるかの様にエレナの耳を優しく撫でる。
くすぐったさにエレナは身体をビクっと震わせた。
/続く