人がよさそうだから、誘拐犯でもきっと良心があると思っていたのだ。
が、そんな彼女の思いは簡単に打ち砕かれた。
グリードは今までの彼とは思えない様な笑みを浮かべている。
そしてエレナの耳をベロり舐め上げた。
「ヒヒッ、大事な大事な耳だからなぁ~、丁重に丁重に」
身体がさらに激しく震える。
エレナはもう頭の中が真っ白な状態になっていた。
そんなエレナを見ながらグリードはゲラゲラ甲高い笑い声を上げる。
「や、やだ……」
消えそうな小さな声での呟き。
グリードはエレナの恐怖する顔を楽しみながら彼女の身体を押し倒した。
そして馬乗りになり、エレナを殺意満ちた視線に見下ろす。
「さぁ~嘆けクズ共ッ! この女にありったけぶちまけてやれやァッ!!」
そのグリードの叫びと同時に――。
『タスケテッ! タスケテッ!』
魂の嘆き声が脳に投げれこんできた。
「いや、いや、いやぁぁぁぁあッ!!!」
さっき味わった頭痛よりも激しい痛み。
エレナは自由にならない身体を必死に揺らす。
地面を何度も蹴りつけ、グリードから逃れようとする。
が、馬乗りになっているためその抵抗も虚しい物だった。
やがてエレナは激しい抵抗はしなくなり、身体をピクピクと痙攣させる。
口端からはヨダレが垂れ流れ、悲鳴にすらなっていない声を上げる。
「ヒヒヒッ! 良いねぇ~その顔! 女が絶頂に達する時の顔みたいだなぁオイ」
エレナの虚ろな表情を舐めまわす様に見つめながらグリードは黒く鋭い刃をした剣を右手に作り上げる。
そしてエレナの耳に黒い刃を近づけていく。
「あ、ぁ、カッ! え、あヵ……」
もう半分意識が無い状態なエレナは痙攣する身体をくねらせ、グリードの剣から逃れようとする。
が、そんなエレナの柔らかな腹にグリードは拳を容赦なく叩き込んだ。
その衝撃で喘ぎ声にもならない声を上げる。
激痛にエレナは涙を流しながら無意識に周りを見渡した。
と、気が付けば周りには何人もの人間が横たわっている。
そそてそのどれもが耳が切断されていた。
(私も、ああなるのかな……)
心でそう呟きながら、ああなった自分の姿を想像する。
今まで〝死〟と言う物は近くに存在していないと思っていた。
だがそれはただの勘違いで、実際に〝死〟と言うのはこんなにも近くにいたのだと、エレナは心の底から後悔した。
/続く