第一章 復讐者 45 | Beyond Despair

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「終わったぞ、婆さん」

ハシゴに上り、電球を磨いている婆さんにそう報告する。

「もう終わったのかい?」

婆さんは信じられない様な顔をしている。

「最低でも一時間はかかるんだけどね。まだ三十分しか経ってないよ?」

「あの程度で三十分もかかるのか?」

鼻で軽く笑いながらそう呟く。

すると婆さんは一気にハシゴから降りてきた。

そしてモップを槍の様に私に突き出してくる。

「アンタ、手抜きしてないだろうね?」

「嘘だと思うなら確かめてくれば良い」

私がそう言うと婆さんは物凄い速さで私を横切り、非常階段を上がって行く。

「本当に元気な婆さんだな……」

あんな老人ばかりなら高齢化社会になっても未来は明るいかもな。

婆さんは二分程度で一階に戻ってきた。

そして最初に言われた言葉は――。

「大したもんじゃないかい」

これだった。

「よくまぁ、あんなにピカピカにしたもんだね~」

婆さんはそう言いながら私の肩をポンポン叩く。

「今どきの若者、この程度の事が出来なくてどうするってんだよ」

先程婆さんが言っていた台詞の真似をする。

すると婆さんは声を上げながら喜んだ。

しかし一瞬、どこか……悲しそうな顔をした様に感じた。

そんな事を思っていると婆さんは私に何かを差し出してきた。

差し出された手には千円札。

「ほら、お駄賃だよ」

「別にいらないよ……」

そう答えると婆さんは私の手を掴み、千円札を握らせる。

「良いから貰いな。好きな物をこれで買うと良い」

そう言いながら婆さんは優しく微笑んだ。

そしてハシゴをたたみ掃除道具を片付ける。

「あぁ、もう好きにして良いよ。アンタに頼む仕事は今日はもうないからね」

婆さんは私の方に顔を向けるなりそう言った。

そしてそのまま寮官室へと戻って行った。

私は婆さんに握らされた千円札を見つめる。

何故だろうか、一瞬婆さんは確かに悲しそうな顔をした。

しかも手伝ったらやけに優しくなったし。

挙句の果てにはお駄賃まで渡してくるし。

「何なんだ、あの婆さん」

まぁ、考えていても仕方ない。

ポケットから財布を取り出し、婆さんから貰った千円札を入れる。

時刻は午後二時ジャスト。

今日は街の見学もかねて散歩にでも行くか。



/続く



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