私は握手には答えず――。
「ライト・クライス」
と、自分の名前だけを告げた。
「ライトって言うんだ、よろしくね」
そう言いながら愛花は右手を引っ込めた。
てっきり握手しなかった事で何か言われるかと思ったのだが。
「でも、どうして王子ファンクラブの女子生徒達に絡まれてたの?」
「さぁな。ただ王子って奴が私に付きまとってきたから、少しぶっ飛ばしただけなんだが」
「あぁ……それで……。だからアイツ倒れてたのか……」
頭をかきながら苦笑いする愛花。
「まぁ、後で私があの子達にもう一度ちゃんと話しておくから」
「あぁ、そこはかなりお願いしたいところだな」
あんな連中にこれから先絡まれると思うだけでゾッとする。
「ところで、貴方ってうちの学院の生徒?」
と、唐突に目の前の生徒会長がそう聞いてきた。
そうだった、ここは学生寮。
制服を着ていないのは私だけだ。
「ここの寮って、学院生以外は立ち入り禁止になってるんだけど……」
腰に手を当てながら愛花はそう言った。
どこか不審者でも見るかのような目で私を見つめる。
「魔術騎士団のエリックって奴が勝手に私をこの寮にぶち込んだんだ」
別に秘密にしろとは言われていない。
なので、正直に言うことにする。
「え?エリック大佐に?」
「あぁ、こっちもそれでいろいろと迷惑してるんだ」
何が同い年の者達と交流、だ。
まだボロアパートでの生活の方がましに思える。
「貴方、大佐とどういう関係なの?」
心の中で愚痴ている私に愛花は疑問そうな表情でそう言った。
「どういう関係って言われてもな。まぁ、簡単に言うなら主と犬みたいな関係だ」
あの男は主従関係、とか言ってたけど。
「雇われてるって事?」
私は頷きながらコップの中のアイスコーヒーを一気に飲み干す。
口の中に苦味が残って気持ち悪い。
こんな事ならミルクティーにしておけば良かったと、今更後悔してしまう。
/続く