こんな事になるなら、投げ飛ばすんじゃなかった。
今更になって反省してしまう。
「ちょっと貴方達、何を騒いでるの!?」
すると、信者共の背後からそんな怒鳴り声が聞こえた。
信者共は次々と振り返る。
「か、会長……!」
そこに居たのはさっきエレベーターで見た女子生徒だった。
「食堂では騒がない、寮の規則を忘れたの?」
「い、いえ……でもこの女が」
信者Aが私を弱々しく指さした。
勘弁しろ、こっちは被害者だ。
「彼女が何か貴方達に害する事でもしたの?」
黒髪の女子生徒がキリッとした目付きで信者共を睨みつける。
すると信者共は小さな声で「いえ……」と答えた。
「騒ぎたいのなら、最上階のリフレッシュルームで騒ぎなさい」
いいわね、と黒髪の女子生徒は信者共にそう言った。
この女子生徒、さっきの王子とは別の意味でこの学生寮では権力を握っているようだ。
信者共も「は~い」と、深々と頭を下げる。
そしてそのまま食堂の出口へと小走りで向かって行った。
途中、信者Aが私を睨んでいたようにも思えたが、気にしないでおく。
黒髪の女子生徒は信者共が食堂を出ていった事を確認すると、私に顔を向けた。
その表情は信者共を説教している時と一変し、どこか悲しそうな顔をしている。
「……どうかしたのか」
私の問いかけにしばらく黒髪の女子生徒は反応しなかった。
そして数秒後――。
「やっぱり、違うわよね……」
と、私の顔を見ながら小さな声でそう呟いた。
「違う?」
「え、あ、ううん……何でもないの」
苦笑いしながら黒髪の女子生徒はそう言った。
そして私に右手を差し出してくる。
「私、火野川愛花。クラスは最近出来た総合コースで、学院では生徒会長をやっています。寮部屋は603号室、よろしくね。愛花って呼んで良いから」
と、火野川愛花は微笑んだ。
握手をしましょう、という事らしい。
/続く