「で、名前は?」
まったくしつこい婆さんだな。
「ライトだ、ライト・クライス。これで満足か婆さん」
嫌々自分の名前を告げる。
すると婆さんはメモ帳を取り出した。
「どうやら本人のようだね。私はてっきり礼儀正しい子かと思ったが」
どこまでも嫌味を言う婆さんだな。
いい加減嫌になってくる。
私はそのままエントランスの奥へと向かおうとした。
すると婆さんが「待ちな」と声をかけてきた。
「アンタ、一体どの部屋に入るつもりだい?」
その言葉を聞いて私は顔を赤くした。
クソ……肝心な事を忘れてた。
私はゆっくりと婆さんの方へ振り返る。
「ば、番号を教えてくれ」
「602号室だよ」
私は無言のまま、602号室へ向かう。
と、また婆さんが「待ちな」と声をかけてきた。
「鍵はいらないのかい?」
「このババァ……!」
私は婆さんの方へ再度振り返る。
すると婆さんは602号室の鍵を催眠術師のようにユラユラと揺らしていた。
「その鍵をよこせ!」
私は強引に婆さんから鍵を奪い取ろうと腕を伸ばす。
しかし婆さんはそんな私の腕を軽々とかわした。
「よこせとはなんだい。くださいだろ小娘が」
ニヤけながらそんな事をほざく婆さん。
どこまでも苛つかせる奴だ。
「く、ください!」
仕方がないので丁寧な言葉でお願いする。
しかし婆さんは首を左右に振った。
「ダメだね、心がこもってないよ。ちゃんと心からお願いしないとね」
このババァ……!
しかし、鍵がなければ部屋には入れない。
いや、ドアをぶち破って入ることは出来るが。
だがそんな事をしたら後々面倒な事になりかねない。
/続く
よければクリック!