知っていて知らずにいた、かなたに見える白樺の木 - 栃木県 奥日光、戦場ヶ原、小田代ヶ原
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AF Nikkor 75-300mm 1:4.5-5.6 S (NIKON)
奥日光に行った。奥日光は一年ぶりだが、去年行っていなかった場所を選んだ。具体的には戦場ヶ原、小田代ヶ原、それに東照宮の裏手奥にある滝尾神社だ。
小田代ヶ原には”貴婦人”と呼ばれる有名な白樺の樹がある。一枚目の写真がそうだ。
この樹がひろく知られるようになったのは、有田洋氏が撮影し続けた写真群による。
昭和45年、彼はどん底の状態にあった。絶望したまま彼は、観光シーズンでもない12月の終わりごろ、小田代ヶ原をさまよっていた。もう死んでしまいたいと思っていたそうだ。
草原のかなたに白樺の樹が見えた。
風の強い日だった。白樺の樹は何度も大きくたわみ、いまにも折れてしまいそうに見えた。
しかしけっして折れはしないその姿を見て、ふいに彼は電撃でも受けたかのような衝撃を覚えた。それまでの暗鬱な思いはすべて消え失せていた。
それ以降、彼は毎週のように、重たい撮影機材を持って東京から電車やバスを乗り継ぎ、小田代ヶ原を訪れるようになった。
その後長年にわたり、彼は同じ樹だけを撮り続けた。
小田代ヶ原に行くとき、彼はいつも「彼女に会いに行くんだ」と言っていたという。
それが現在、”貴婦人”と呼ばれる樹だ。もちろん、彼が付けた名ではない。彼はあくまでも「彼女」と呼んでいた。
今回、湯元温泉の”奥日光パークロッジ深山”というところに宿泊した。そこが彼がいつも泊まっていた宿だということを知らずに。
宿には彼に関する資料が種々残されていた。ここまでの記述内容も、それらの資料による。
昼間、小田代ヶ原をめぐっていたのだが、有田洋氏のことをなにも知らなかった。
その宿を選んだのは、まったくの偶然だったのだ。
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