初夏、雨に濡れる龍神の聖域にて - 日立市 御岩神社

 

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今日は雨が容赦なく降っている。それなら撮影日和と言えるので、日本最古、五億年前の地層が露出している御岩神社に行くことにした。

御岩神社の創建時期は不明であり、縄文時代末期の祭祀の遺構が発見されているほどに古い神社だ。

祭神は数多く、仏教の大日如来や阿弥陀如来もまた神と同等の存在として、ともに祀られている。

 

江戸時代、水戸藩は御岩神社を常陸の国の国峰と定めた。

水戸光圀(水戸黄門)以降、領内の神仏分離を苛烈なまでに徹底した水戸藩だが、御岩神社の神仏混淆に手出しをすることはなかった。

明治維新後の廃仏毀釈を経ても、神仏混淆はそのまま残された。

時の権力者たちは、イデオロギーによってこの地に手出しをすることができなかったのだ。

 

 

御岩神社は最初から神社として定められていたわけではないだろうと思う。

主祭神の内の一柱である立速日男命(たちはやひをのみこと)は、雷神あるいは龍神、水神などの属性を持つとされる。

諸説はあるにしても、少なくとも穏やかな神でないことだけは確かだ。

 

当初、立速日男命は人里に近いところに降りたのだが、人が自分の居場所を汚すことを怒り、疫病や災厄によって祟った。そのため清浄の地とされる御岩山に遷されることになったのだ。

もともと聖域であった地において、立速日男命が遷った頃から神社としての体裁が次第に整っていったのだろうと思う。

 

 

今日の御岩神社は最近では珍しく、人影がほとんどなかった。

何年か前までは、それが普通だった。混雑するようになったのはパワースポットとして有名になってからのことだ。

普段は雨が降っていても混んでいるのだが、たまにはこういう日もあるのだろう。

 

山頂まで行くつもりだった。しかし、やたらと雨が降っていることにより、今日は入山禁止になっていた。

それにしても雨が降っているのは、なんとも楽しい。

木々に覆われた参道は、雨の日には特に薄暗くなる。そんなとき、苔むした参道からふと振り仰げば、木々の間にひろがる空によって、視界が一瞬、ホワイトアウトする。

 

その瞬間を迎えるだけでも、来た甲斐があるというものだ。

いや、立速日男命からは、「お前ごときが見ているものなど、ほんの一端にすぎぬわ」とか言われそうだ。

 

もちろん、そんな言い方をされれば、誰だってなにか言い返したくなるだろう。

しかしなにしろ穏やかな神ではない。うかつに言い返せばどんな目にあわされるか、分かったものではない。

そこでの絵を拾い集め、「ほんの一端以外のもの」を探してゆくしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バッハの無伴奏チェロ組曲。神前での舞の音楽だ。

BWV 1011 - Cello Suite No.5 (Scrolling)