MAMIYA-SEKOR 1:6.3 f=65mm
6×9中判カメラであるマミヤプレス用のセコールレンズだ。発売は1960年代の初頭だろうか。
マミヤプレスは多くのプロに使われたが、このレンズは独特の光学系を持つ。
ドイツのツァイスが1933年に開発した4群4枚のトポゴンタイプなのだ。
トポゴンの断面図。画像はウィキペディアより。
トポゴンは、外から見るとまるでビー玉のようであり、完全に対称形の光学系を持つ。対称形であるから理論的に収差はほぼゼロと考えてよく、それだけならレンズとして理想形とも思える。
しかしこのレンズタイプは、一般向けとしては普及しなかった。
そもそも「トポゴン」の語源は「地形」であり、このレンズは地図作成のための航空写真撮影用に設計された、機能が特化した超広角レンズなのだ。
欠点とされる周辺光量落ちなども、要求される性能は「収差なしの正確さ」だったから、被写体さえ識別できれば問題にはならなかっただろう。
1933年のレンズなら、おそらく、敵国の正確な地図を作成するための軍事用にも使われたのかもしれない。少なくとも、一般的になることはなかったレンズなのだ。
トポゴンタイプのレンズは、バックフォーカスの制約が大きい、明るいレンズを作れない、内側のメニスカスレンズが作りにくいなどの事情もあり、市場には、ニッコールなど数機種しかリリースされていない。
これまでに各社から膨大な数に上るカメラ用レンズがリリースされてきたにもかかわらず、トポゴンはわずか数種なのだ。
たとえば「ニッコール千夜一夜」に、ニッコール・トポゴンの開発の経緯が書かれているが、それを読んでも、一般的にならなかった理由がわかる気がするのだ。
Eマウントボディで使う場合には、中判用レンズはバックフォーカスが長いからなんの問題もない。
また、6×9判レンズの広大なイメージサークルの中心部だけを使うため、超広角という属性と引き換えに、周辺減光の影響も皆無となるのだ。
一般的にはエレメントの枚数は少ないほど、描写の生々しさや立体感が出てくると思う。それなら、なかなか期待度が高いレンズと言えるだろう。(^^)
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マミヤプレス用レンズ対応のマウントアダプターは、市販されているのを見たことがない。
そのため、金属製のレンズフードを使って、マミヤプレス用のEマウントアダプターを自作した。
なぜご紹介写真に青いビニールテープが巻いてあるかは、次の記事を参照されたい。
この簡易アダプターを使って撮影した他のマミヤプレス用レンズの記事はこちら。
今日は晴れ。このレンズを持って、ふたたび水戸光圀公のご隠居所に行こう。
引退後の水戸光圀公は、もう自分は公人ではないからと、自ら田植えをして、年貢米を当地の奉行所におさめていた。
その田んぼは復元されている。いまごろは米の収穫も終わっていることだろう。
Bach - Inventions, BWV 772-786