※一次

 昼寝から覚めると、体がガチガチに固まっていて辛かった。起き上がるのにも関節がいたい。そりゃあそうだ。板張りの、クッションもないような外置きのベンチに体を押し込めればそうもなる。
 だけど、俺はこの場所が好きだった。ここで眠ることが幸せだった。
 そういうと、連れは泣きそうな顔をする。素直というか、なんというか。そんな顔をしないでほしいと思うけど。
 俺は、俺の肉体が自分のものでないような感覚がある。手のひらひとつ握るのに違和感がある。支障はない。動ける。戦いでだって遅れをとらない。体力勝負には確かに弱いけども。
 理由は明白だ。故にどうしようもないことを知っている。魂と肉体、その接続をいじることなど俺程度にはできはしない。
 だから、借り物のようなこの体が痛いのは、ああちゃんと、ちゃんとこれは俺の体なのだと実感できて少し嬉しかったりする。そうやって刺さるようなもので俺は俺を自覚している。マゾだ、といわれたらそうなのかもしれない。もっとも、俺の場合は快楽は伴わないのだけど。どちらかといえば安堵だ。安心していいという心の余裕、といってもいい。
 傷だとかはあんまり嬉しくない。泣いてしまう人がいるから。
 だけど、こうやって穏やかな時間の中で痛みに眉をしかめるのは心地よい。深く息が吸える。生きているのだ、この体はちゃんとまだ俺のものなのだと理解できるから。
 それが本当はよいものではないのもわかっている。少しずつ何かが壊れていくのは気がついていて、でも、どうしてもしがみつくしかない。
 俺は、生きている。間違いなく。
 どこまで生きていけるのかはわからないけれど。
 そう考えて、はて。と首が横に倒れた。
 どこまで生きていけるか?だなんて。まるで長く生きたいとでもいうような思考だ。
 それは望むものではない、はず。
 なんだろう、最近ぶれている。
 たまに何を望んでいたかを忘れそうになる。
 そう、例えば。たとえば。
 眉間を押さえ、思考に落ちようとすればそれを遮って止めるような叫びが鼓膜に刺さった。
「くーうー!おーきたーのー!」
 春の嵐もかくやと言わんばかりの大声だ。顔をあげれば、喜色満面、飼い主に向かう犬のような足取りでかけてくる男がいる。
 ふー、と長く息をはいた。思考を押し流し、言葉を拾い上げる。
「おーう、起きた起きた!なんだよ、待ってたのか」
「いつだって僕は待ってるさ」
「うーん、おまえはそういうことをどうしてさらと」
「え?」
「うーん」
 恥じらいもなく告げられる言葉に苦笑をこぼす。そんな俺が理解できないと瞬く瞳は若気のようにまっすぐだ。
 この視線にさらされているとハッキリしていくものとぼやけていくものがある。
 それに名前をつけることは、まだ、できないでいる。