※一次

「僕があの人に願っていたのは『いきたい』と思ってほしい、ということ。そしてそばにいてほしい、ということ」
 まっすぐに射抜く瞳。光輝くもの。矢のように飛び行く前へ進むための意志。それは、誰かの夢を壊すための道であると彼は確かにわかっている。
「琥空の意志を曲げること、夢を壊すこと。それが僕の望み」
 静かに、一切の感情を乗せずに彼は言い切る。大切な人のために大切な人の願いをを嘘にすると。それをためらうことなく言い切った。
 驚愕に目が見開かれる。この人があの人のことを心から想っていると知っている。一番に思っていることなんて痛いくらいにわかっている。けれど、彼は、故に望みを奪うと言っているのだ。
 考えられなかった。理解できなかった。愛しい人の願いは誰だって叶えたいものじゃないのか。そう思いながら、この人が愛したあの人の願いなど知り得ないことも気がついていた。
 そんなこちらの迷いに気がついているのかいないのか。彼はとつとつと言葉を続ける。
「そばにいてほしいと、そんな願いさえあの人を踏みにじることだった。あの人の願いを、僕は叶えられない。受け入れられない」
 それでも、と。小さな呟きは、しかし、どんな鉱石よりも固い決意を秘めている。割れることのない、失うことのできない心がそこにあった。
 この人は、きっと、本当にあの人のことだけを。
「琥空が願わない幸せを、あの手に渡したいんだ」
 どこまでも遠くを指すような光だけがその瞳にはあった。