「心はイキモノだ。変わらないほうがおかしいよ」
「それってー永遠の愛はないーって話?」
「結果的に永遠の、になることはあると思うけどね」
「結果的に?」
「だってほら、途中経過だけ拾っても永遠とはいえないじゃないの」
「知ってる?それへりくつって言うんですよ?」
「へりくつこねられなくなったら人間じゃないわぁ」
けらけらと高く笑って、彼の人はコーヒー缶の尻を上へとあげた。喉が二回動いて止まる。
いつものように、まずいなぁと舌を出して緩く黒い円筒を振った。
「さて、いつもの時間はこれで終わりだけど。ここからボーナスタイムね」
「はい?」
「というか、宿題だしとこうかなと」
「はい?」
きっと、空になって冷えたスチール。それを頬に当ててイヤに憎たらしく唇をあげた。そのなんとも意地悪な顔つきを、けれど、ひどいと思わなかった。
「考えてばかりいるんだよ。いろんなこと。そうやって考えてばかりでめんどうになってきて。そしたらもう、そこで答えを無理に出してもいいかなと」
「ざ、雑では」
「雑だねぇ。それってさ」
立ち上がる。笑みはもうない。けれど、瞳の色だけが変わらない。深くて遠い、海の底のようなそれ。その深淵の中から這い出るような、ゆっくりと静かな声で彼の人は『宿題』を出した。
「卑怯だと思う?」