「無力だーって嘆くけどさ、それって当たり前のことなんだよ」
 ふー、と長い息の後にゆっくりと言った。
 白く溶けた呼気の向こうにはネオンの混ざった夜空だ。ほんの少し、大通りを外れただけでこんなにも喧騒は遠くなる。切り離されたように感じて、空の手の冷たさに苦しさを覚えた。
 そんなこちらのことには構うことはなく、彼女はコンクリートの壁に背中に預けていた。
「よくね、無力だー、なんもできなーい、役立たずーって嘆くことってあるんだけど。そういときってだいたいそれって当たり前なんだよなぁ、ってこと忘れてるときなんだよね」
「なにもできないことなんて、あるの?」
「そりゃああるよ。当たり前。当たり前に大多数の誰にだってあることだよ」

「でもね、それは嘆くようなことじゃないんだよ。できない、それでも、だからこそ許されるあり方があるんだから」

 そう呟いた顔は、蛍光ピンクが差していて、本当の色を見せてはくれなかった。