現実をデッサンする作業は苦手だ。
そもそも私は抽象的な世界にしか生きられない。
どんな批評家に基本を学べ、たとえ画力のなさを指摘されても、それを変えようとはしなかった。
現実を生きようとすると、空を飛んでしまう。
私にとって現実は漠然としている。
外に出ても、夢の中にいるような記憶しかない。
リラックスできるのは家にいるときだけ。
私の絵は鮮明ではありませんが、私の心は私の世界を正しく捉えていると自負しています。
それはいいことだ。
私はかなり近視です。
生まれ育った横浜の実家の車で夜のドライブ。
コンタクトレンズなしでは、ぼやけた色の情報しか得られない。
しかし、それが私の現実だ。
強度の近視のため、すれ違う人の顔が見えないのは私にとって好都合だ。
現実は、四季を通じてイルミネーションを感じさせる電子ライト、
手にしたスマートフォンで撮る不鮮明な写真にリアルを映し出させる。
カタツムリがよく夢に出てくる。
カタツムリはゆっくり歩くが決して止まらない。
遅くなったが、辛くはない。
時々、カタツムリと自分を比べてしまう。
ゆっくりと、しかし確かな足取りで道を進む。
京都にいる。