サルの団長に招かれ、ぎん と たま の二匹はトンネルテントの前にやってきた。テントの入
り口はとても大きく、入り口の上からはダラリンと 大きなカーテンが降ろされていた。
「ささ、お二人さん。中にお入りください。」
サルの団長が、ステッキでカーテンを持ち上げると、ぎんは うなずいてカーテンの中に入って
いく。たま は置いて行かれまいと、ぎんのしっぽから目を離さずに うしろを追いかけた。
テントの中は、ところどころにある 鈍く灯るあかりに照らされ薄暗かった。けれども、夜道を
駆け抜けてきた二匹には まぶしいくらいに思えた。
サルの団長が二本足でよちよち歩き、そのうしろを ひたひた ぎん と たまが歩く。
「ここからは 少し道がせまくなりますよ。お気をつけください。」
すると、間もなく目の前に大きな岩が転がっているのが ぎん と たま にも わかった。
大きな岩に近づくにつれ、わしゃわしゃ と 岩から音が鳴る。
それでいて、その岩はゆっくりと動いているようにみえる。
サルの団長は、今まで道の真ん中を歩いていたが、急に背を壁にそわせながら歩きはじめた。
ぎん も たま も 脇腹を壁にそわせてサルの団長についていった。
二匹は、生唾を飲み込みながら、一歩一歩 岩へと進む。そして、いよいよ 岩の横を
通り過ぎる時。壁と反対の脇腹が岩とぶつかった。岩は温かく、わしゃわしゃと鳴る音が頭上で響
く。そして、岩の表面は、ぎん と たま と同じような毛並みに覆われているようだった。二匹
は、サルの団長に続きぐんぐん前に進む。窮屈な道をスコーンと抜け出ると、岩の上を見上げた。
「とうちゃーん・・・これ何・・・」
たまが 泣きそうな声を出す。ぎんは、見上げたきり、声が出ない。
「ふふふ。びっくりしましたか。この子は、ラクダですよ。まだ、子どもです。なーに、大人
になったら、もっと大きくなりますよ。そう。やまのように!!」
サルの団長は両手をグルグルまわして、大げさにうなづいてみせる。
ラクダは、まるで気にせずで知らん顔。天井から吊るしてある草をわしゃわしゃと食続ける。
「とうちゃん。びっくりしたね。」
「まったくだ。」
ぎん と たま は 目を合わせて肩をすくめる。
「じゃあ、これから もっともっと 楽しいことご覧ください。もう少し行くと ステージが
みえてきますから。」
胸を張り、更に先の暗闇をステッキでサルの団長は指す。
「いってらっしゃーーーい。」
ゆっくりと低い声が、頭上から聞こえる。
ぎん と たま が はっと見上げると、ギョロットした目玉でラクダが二匹を見下ろす。する
と、ラクダは また何 もなかったかのように遠い目をして、わしゃわしゃ と また草を食べ始
めた。
(つづく)