ラクダの横を通り過ぎると、間もなく 前に明るい光が見えてきた。
進むほどに その明るさは強みを増し、夏の日差しのよう。
「着きましたよ。まだまだ席はたくさん残っていますんでね。前の方にお座りくださいな。」
サルの団長の足が止まり、光りの方へ手を差し出す。ぎん と そのうしろを追いながら、たま
がひょっこり 顔を出す。そこには、広い広場が あり、真ん中にはステージがあった。
「わあ、すごい!!もう、お客さんもたくさんいるよ。」
たま は とび跳ねる。
「ふふふ。そうでしょう。今はまだ、満員ではありませんが、来年には なーに。ここいっぱ
いにお客さんを集めますよ。それが、私の夢でしてね・・・」
サルの団長は得意げに胸をたたく。しかし、ぎん は じろり と 辺りを見渡して、首をふっ
た。
「残念だが、無理だ。見てみろ。客はみんな人間だ。」
ぎん の 言葉に たまは しっぽを落とす。サルの団長は かがんで たま の頭をなでた。そ
して、ぎん を 見上げると、
「おやおや、お忘れではございませんか?あなたたちは 天下を あっと言わせる 化けの天
才 きつねの一族ではございませんか。」
「それは そうだが、もう何年も 化けてもいないし、こんなに 人間が多い中にじっと
座っているなんて危なすぎる。」
ぎんがチラッと たまの顔をみると、たま の目は輝いて ぎん の 顔をみつめていた。
「大丈夫だよ。とうちゃんの化け姿はかっこいいもの。だから ねえ、行こうよ。」
たまはニコッと笑い、その場で 自分のしっぽを口でくわえた。上から見ると ドーナツのように
みえる。そして、そのままクルクル走り始めた。回るスピードは だんだん速くなり、やがて、
ゆっくりと止まった。すると、両足を抱えて おやまさん座り をしている ちいさな男の子に
なった。
「ひゃあ、たまげた。上手に化けたもんだ。」
サルの団長は 手をたたく。そして、ぎん に 目をおくる。ぎん は 大きく ひとつ ため
息をついた。そして、素早く、高くジャンプしたかと思うと、宙返りをした。ぎん は 人間の男
に化けた。
「さすがです!!」
サルの団長の声が、興奮して うわずった。
(つづく)