ぎん と たま は、川の土手を 背を低め、息をひそめ 駆け上っていく。そして、土手の上
に着くと、道を はうように走り抜けていった。向こうの川岸 奥の丘の上。チカチカ輝く光は遠
くて近い。夜もすっかり更け、家々の灯りはすでに暗く 眠りについていた。この時間だけが、昔
と変わらない静かな音が聞こえた。
「ねえ、とうちゃん。もう着く?」
ぎん の うしろで たまが息を切らしながら たずねる。
「あぁ、もうすぐだ。」
「だけど、もう疲れちゃって走れないよ」
そういうと、たま の足がぽつり ぽつり と 止まる。
ぎん は 立ち止まり、振り向き たま を みつめた。
たまの元へ ぎん が ささっと 近づき、口で たまの 後ろ首をくわえた。たま は ずいぶ
ん大きくなったので、くわえられると、うしろ足が もう 地面すれすれだ。そして、ぎん は
再び丘の上目指し走り始めた。
それから、間もなく ぎん と たま は 丘の上 近くにやってきた。近づくほどに その
光は黄金色の輝きを放っていた。そして、その光が 花火では ないことも わかった。流れ星の
ように丘の上の空を駆け巡っていた。光りを仰ぎ見ながら ぎん と たま。やがて、丘の上 に
たどり着いた。丘の上にたどり着くと、空の光は すっかり消え失せていた。
ぎん は たま を ゆっくりと 地面に降ろした。
「ねえ、とうちゃん。何もなくなっちゃったね。」
「そうだな・・・」
二匹はあたりを見渡した。
「いえいえ、そんなことは ありませんよ」
二匹は驚いて、声が響くうしろを振り返る。
すると、シルクハットをかぶり、タキシードを身に着けた 大きなサルがニカッと笑いながら
二匹を見つめている。
ぎん が そぉっと たまを くわえ、サルをにらみつけ 後ずさりをする。。
「おっと、そんな怖い顔をしないでくださいな。私は、あのテントの団長なんです。せっかく
ここまで に おいでに なられた。どうぞ、見に来てくださいな。」
サルは自分のうしろの暗闇を持っていたステッキで指す。二匹は暗闇の中を見つめる。
すると、そこには巨大なトンネルのような長いテントが浮かび上がった。
「不思議サーカスにようこそ!!」
サルの団長は キャッキャッと甲高い声をあげ、二匹においで おいで と手招きをした。
(つづく)