まにまに (2) | Rainbowのブログ

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 きつね住むこの界隈。人様はめったに動物を見ることがなくなった。

そんなもんで、きつねの親子は 良く人様に知られていた。

背骨に沿って毛が銀色の親きつねを「ぎん」

川岸をたまのように転がり走る子きつねを「たま」

人様はそう呼んでいた。


 ある夜更け。川岸の藪の中で親子で眠っていると、


 「ねえ、とうちゃん。起きてよ」


たまは、ぎんを鼻でつつく。

ぎんはパチッと目を開き、耳をたてすました。


 「どうした。」

 「あのね。向こうの山の上がさっきからチカチカ光るんだよ。きっと花火じゃないかなと思って

  さ」

そういうといなや、たまの顔はしまったという表情に変わる。


 「どうしてお前は 花火という言葉をしっているんだ。」

ぎんの鋭く黒い目が たまの慌てる瞳を追いかける。

 「とうちゃん。怒らないで 聞いて。いつの夜だか忘れたけどさ、とうちゃんが食べ物を探しに

  出かけたでしょ。ぼくがここで隠れていると、人の声がたくさん聞こえたんだ。だから、そ

  うっと顔を出したら、たくさんの人が道を歩いてたんだよ。そしたらね、みんな花火を見に行

  くって話をしてたんだ。だからね 僕 人間の男の子に化けて花火を見に行ったんだ

  よ・・・」

たまの話が終わらないうちに ぎんは歯をむき出し、たまの顔に近寄った。

 
 「いいか。何度も言う。ひとりで化けて 人間に近づくなといっただろう。お前のかあさんは

  それで帰って来ないんだぞ!!!」

ぎんの低いうなりごえは、たまらなく怖い。

たまは「ごめんなさい」と背を丸め、体を横たえる。

ぎんも、体を横たえ、たまを包み込んだ。



 母きつねは、人間に化けて、出かけたっきり 戻って来ない。もうどれくらい経っただろうか。

その日も、ぎんは家族の食べ物を探しに町中に出かけていた。しかし、店先の食べ物をくわえた瞬

間。店の中から犬がとび出てきて、ぎんの脇腹にかみついた。もう一度深くかみなおそうと犬が力

を緩めた。ぎんは大きく飛び跳ね かわした。そして、勢いに身を任せ、すみかまで逃げ切ったの

だった。

 それでも腹の傷は深く、一度体を横たえると立ち上がれなかった。ぎんの横にはもう数日も食べ

物を食べていない たま が 元気なく眠る。

母きつねは すくっと立ち上がり、ぎんと たま をみてほほえんだ。


 「わたし、人間に化けて、葉っぱもお金に変えて たくさん買い物をしてくるわ」

 
 「だめだ。危なすぎる。」


 「大丈夫よ。わたし、これでも小さいときから化けるのが得意だったんですから。坊や。大事

  な坊や。すぐに戻ってくるからね。お父さんの言うこと良く聞くんですよ。」


 たま は うん!とうなずいた。

母きつねもうなづくと、さーっと走り出し、みるみるうちに 人様のおんなへと変わっていった。


それが、母きつねの最後のうしろ姿だった。




そのうしろ姿を何度も思い返しながら ぎんはたまに頬ずりをした。
 
 「さっきは、あんなに怒って悪かったな。」

 「とうちゃん こわかったよ・・・」

たまは振り返って、下からぎんをにらむ。

 「・・・花火みたいか?」


 「・・・みたい・・・」

たまは、ふてくされて小さな声で答えると、

 「よし、花火見に行こう。」ぎんがうなづいた。

 「わーい!!本当に良いの?」

たまは あっという間に立ち上がり、目を輝かせた。



        つづく・・・