夜のとばりがおり、家の中から ぽつり また ぽつり と灯りがともる。
その 灯りの間を ジグザグと縫いながら やせっぽっち の きつね が 必死にかけぬけて
ていた。
「はあはあ・・・ざまあみろ。おれも やるときはやるんだよ!!」
息を切らしながら、きつね は得意げに笑う。
ついさっき きつね は近くの肉屋の前を歩いていた。すると、ちょうど店主が店の奥に引っ込ん
だもので、なんて ついているんだ と思うと すぐさま、店先に並んだ肉にガブッと一口かみつ
いた。
「こらーー!!」
店の奥からけたたましい声が響き渡った。
きつね は 驚いて 肉を落とすところであったが、慌ててグアッシ グアッシ と 口の奥へと
送りやった。
このまま、のど の奥へと、押しやりたかった。すると、どんなに 腹の中 の 自分が 喜ぶ
だろう。だけど、すぐさま 自分より もっと 喜ぶ顔 が 目の前によぎる。
歯をくいしばり、肉を押さえた。そして、振り向くと、肉屋の店主が、棒を振り上げながら き
つね に 近づいてきた。店主が振りかざした棒を、ひょいと 飛び跳ねてかわした。
「こらーー!!次に会ったら 必ずとっつかまえるからな!!」
きつね の はるか 後ろで、店主が地面を棒で叩きながら 叫んでいるところ を逃げ切ったの
だった。
町の真ん中をせせらぐ 川岸の藪の中。
そこに、きつねは、 小さな息子のきつねと暮らしていた。
がさがさと草藪をかきわけると、息子のきつねが ひょいっ と 飛び出てきた。
「おとうちゃん。お帰り!!」
「ただいま。」
きつねは、息子きつね と 鼻をすり合わせた。
息子きつね の 前に 肉を 落とすと、きつね は うなずいた。
息子きつねの顔は とたん に 輝きを増し、口からは うれしそうな 声がもれる。
きつねは、 クルン と 丸まって、体を横たえた。
昔、きつねが暮らすこの辺は草原であった。きつねは 今までと変わらず ずっと この場所で
生きてきた。
木の実 や 虫たちも たくさん息をしていた。そして、きつねは その いのち をいただき、
仲間たちと生きた。だけど、気が付けば どこにも仲間の いのち の 声が 聴こえなくなっ
た。
代わりに、夜になると 真っ暗で、風の音しか聞こえない草原を いつの間にか 大きな固くて、
騒がしい光りたちが のみこんでいった。
つづく・・・