「狙われたのも忘れて、呑気なものねぇー。
もう1度、撃たれてくる?」
友里はオイラの左耳たぶの傷を確認すると、軽く息を吐いた。
「そーだそれだよ、オイラは何故、狙われたんだ?」
オイラは友里を追い、リビングに入った。
オイラの背丈以上の観葉植物が2鉢、ソファーの横とテレビの横に置かれている。
リビングの香りも玄関と同じ。
オシャレで優雅だ。
チェストの上に友里好みのステンドグラスのランプが飾られているのを見、ほっとするような懐かしい想いがした。
夫婦だった頃、近所にステンドグラスの教室があり、友里は2年ほど通っていた。
教室を止めたのは、月謝の値上げ。
ひとつくらい熱中できるものは必要だと勧めたが、「十分楽しめた」 と止めてしまった。
安月給を痛感した一件だ。
室内を見回すと、ソファーに腰を下ろした。
腰痛持ちにはありがたい、少し硬めの座面のソファーだ。
臀部が沈み込み過ぎず、座り心地がいい。
タクシーのシートも、こんなだったら楽なのにな。
「山下と知り合ったのが運の尽きね」
友里はオイラの横に座り、耳たぶに絆創膏を貼ってくれた。
「鮎川くんをアンタに張り付かせて正解だったわ」
「オイラ、山下の居所なんか知らないぞ」
「わかっているわよ、それくらい。
警戒心もない生活を見てりゃね」
何故だかオイラはムッとした。
視線の先に立つ鮎川のニタッと笑いにも。
「姐さんは、心底、前村さんを心配したんすよ」
「余計なことは言わないの」
鮎川は肩を竦め、唇を結んだ。
友里は鮎川を尻に敷いているようだ。
うんうん、女性に手綱を握らせるほうが円満な関係が築ける。
鮎川よ、うまくやったな。
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