「冷蔵庫の中の物、勝手に飲み食いしてもらっていいんで、リビングで待ってて下さい。
姐さんを呼んで来ますから」
「えっ、えええ、ええー!」
「あのー、何度も何度も反応が良過ぎっす。
今度は何すか?」
オイラの叫びに、鮎川はしらけ顔で首を掻いた。
「いやーいやいや… 鮎川くんと友里は、ここで一緒に?」
いくら若く見えるとは言っても、鮎川くん、友里の年齢を知っているのか?
友里、こんな歳下イケメン男を捕まえやがって! ビックリだよ、オイラは。
はっはっはー。
娘が初めて自宅に男を連れて来た時の父親みたいだ、そわそわするぜ。
その昔、友里の親父さんもオイラを前にこんな感じだったのかな。
手巻き寿司をよばれている時、親父さんは10分に1度、席を立っていた。
あの時、一生友里を守ると宣言したのにさ、約束を破ってしまったこと、後悔しています。
親父さん、友里はオイラと別れて良かったようですよ。
オイラと別れたおかげで、鮎川っていう見事な青年と出会え、こんな綺麗な部屋で暮らしている。
ああ、良かったですね。
友里の幸せはオイラの幸せでもありますよ。
オイラは2人を応援します。
「同僚っすから」
鮎川の答えに、オイラは体のバランスを崩した。
お笑いの演者なら、ズルっとこけている。
「ど、ど、同僚って言い方は、友里がかわいそうなんじゃないかなぁ」
「何で?」
相変わらず淡白な返答をする鮎川には参る。
照れているのか?
おーいおい。
「何でって、鮎川くん、オバサンをからかっちゃいけないよ」
「オバサンって、前村さんはオジサンっしょ」
「いやいやいや、オイラのことじゃなくってさ」
「んじゃ、誰っすか」
鮎川が鼻で笑った時、
「あなたたち、うるさい!」
廊下の先の引き戸が開き、ストライプのAラインワンピースを着た友里が現れた。
ブロンズ色のワンピースが、友里の女っぷりを上げている。
オイラはワンピース姿の女性に弱い。
元妻だが、―― うん、いい眺めだ。
『探さないで下さい』→ 次話(33)