「どうなってんだよ?」
状況を何ひとつ把握できないオイラは、鮎川に導かれるまま、タクシーを乗り継ぎ、高層マンションに辿り着いた。
リゾートホテルのような高級な佇まいのマンションで、着古した普段着で入るのは気が引けたが、鮎川が 「どうぞ」 と言うんだから遠慮なく進んだ。
一歩進む度に、天井に取り付けられた監視カメラが目にとまる。
見ない振り、気付かぬ振り。
少しでも出来る男に見えるよう、オイラは背筋を伸ばし大股で歩いた。
エレベーターに乗り案内されたのは24階の1室。
鮎川は尻ポケットから出したカードキーをドアに差した。
部屋に入ると空気が澄み、癒し系の香りが柔らかくオイラの鼻孔に届いた。
何の香りだろう?
嗅いだことのある香りだが、答えられない。
ラベンダーより儚く、ローズほど甘くない香り。
そして、少しスパイシー。
「まさかとは思うけど、ここは鮎川くんの?」
鮎川は簡単に頷いた。
オイラは目玉を飛び出させ、
「えっ! えええええ…!!
運送会社って、そんなに儲かるのかよ!」
銃撃された時にも発さなかった叫び声をあげた。
「俺たちがカタツムリ運送の人間じゃないと見破ったくせに、何言ってんすか」
「―― ああ、そうか。
そうか、そうか」
息を整え、オイラは2度頷いた。
『探さないで下さい』→ 次話(32)