探さないで下さい 27 | AKI 's ミステリー           

AKI 's ミステリー           

これまでに書きためた作品を紹介します。

ブログネタを利用したお遊びstory〈梅と愉快な仲間たち〉も毎日更新♪

『探さないで下さい』 第1話、 前話(26)

 

 

 岸田の婆さんがオイラの部屋を訪ねてきたのは、正午前。

 

深い眠りについている時だ。

 

岸田の婆さんの容赦ないチャイム&ノック攻撃で、オイラは目覚めた。

 

頭が重い。

 

「厄介なことになったよ」

 

「管理業者に、難儀なことを言われたか?」

 

「管理業者は親切に対応してくれたよ。

事情を話したら、すぐに理解してくれて、向こうから登夢くんのお父さんの職場に問い合わせてくれた。

問題は、それから」

 

 岸田の婆さんは地味色の千鳥格子の傘を壁に立てかけると、玄関内に入り後ろ手でドアを閉めた。

 

岸田の婆さんよ、そんな傘を持っているなら、そっちを貸してくれよな。

 

オイラ、短距離でもどんなに恥ずかしかったか・・・。

 

「登夢くんのご両親、どこの誰だかわからないんだよ」

 

 ゴクンッ、オイラは生唾をのんだ。

 

岸田の婆さんの瞳が鈍く光っている。

 

「申告していた勤め先は実在しない、保証人もデタラメ。

管理業者は大焦り、警察に届けるそうだよ」

 

「デタラメの保証人って・・・、 審査するだろ?」

 

「うん・・・ 審査時に不審な点は何一つなかったらしいよ。

提出する書類に不備もなかったし、毎月のお家賃だって延滞ないって。

あと難しい事を色々説明してくれたけど、私にはよくわからなかった。

気になる事があったら、前村さんから問い合わせてみて」

 

 そりゃそうだ、どんなにしっかりしていても、岸田の婆さんは婆さんだ。

 

歳を重ねるほどに、理解力が低下するのは避けられない。

 

特に、日常に必要でない内容は。

 

「となると、登夢くんを預けるのはリスキーだな。

岸田さんの孫が面倒事に巻き込まれても困るし。

オイラが預かるよ」

 

 背に腹は代えられない、オイラは意を決した。

 

岸田の婆さんには荷が重すぎる。

 

それに、事情を知れば岸田の婆さんの息子だって、反対するだろう。

 

オイラの勤務シフトくらい、どうにかなる。

 

どうにか…。

 

「バカ言っちゃいけないよ!

登夢くんは私が責任を持って預かる。

親が何者でも、子供に罪はない。

今となっては老いぼれ婆さんだけどね、その昔は肝っ玉母ちゃんで通っていたんだよ。

子供のためなら、任せときな!」

 

 岸田の婆さんが豪快に胸板を叩いた。

 

発言を引き金に顔に赤みが差し、肌に艶が出てきた気がする。

 

いくつになっても女性は女性、母性本能って奴に男は勝てないぜ。

 

++++++++++++++++++++++++

 

 

 

『探さないで下さい』→ 次話(28)