昨日、登夢くんがオイラの部屋を訪ねて来た時のことを思い出す。
帰宅したのに母親が不在で、部屋に入れない。
そう言って、オイラの元にやって来た。
ランドセルを部屋の前に置いてきた理由は、自分の帰宅を母親に知らせる為だとも。
オイラとしては、ランドセルだけが残され息子の姿がない方が、母親は心配すると思うのだが。
ともかく、登夢くんは両親がなぜ自宅に戻らないのかを知らない。
両親は登夢くんに内緒で、自ら姿を消したのか?
―― 事故?
いや、それは考えにくい。
父親か母親のどちらかが事故に遭ったって、無事な方が連絡をするはずだ。
ママ友でもいい、岸田の婆さんにでもいい、誰かに登夢くんを頼むに違いない。
では・・・。
「しまった」
コンビニ弁当を広げたオイラは、カップみそ汁の買い忘れに気付いた。
食べるつもりで湯を沸かしているのに。
食事に汁物は絶対のオイラが、なぜ忘れた?
ん・・・ そうだ、シジミかアサリが食べたかったのに、棚に並んでいなかったからだ。
そんでもって、在庫から選ぼうとしていた時に、友里からの電話。
そうだ、そうだ、登夢くんの両親に件があり忘れてしまっていたが、隣室の山下も依然所在不明のまま。
友里は隣室に変化はないかと、確認の電話をかけてきたんだった。
「山下が帰って来たら、連絡するよ」 そう言って通話を切り、みそ汁をカゴに入れずレジに並んじまった。
ぐすん。
ショックが大きい。
仕方ない、湧いた湯に醤油でも混ぜ、弁当の厚焼き卵を椀種にすりゃ気分だけでも料亭になるだろう。
―― ならないか?
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