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「おい鮎川くん。
いい加減、後を追いまわすのを止めてくれないかなぁ。
気になって、気になって、仕方がないよ」
西森商店街を抜け、駅前通りに出たところで、オイラは歩みを止めた。
人通りが多くても、ただの通行人と自分を尾行する人物の足音の違いくらい、わかる。
徐に振り返ると、薬局前でにこやかにポーズをとる巨大なリスのキャラクターの足元の陰に、男性ものの革靴が見えた。
オイラの声かけに、男性はキャラクターの背後から顔を出した。
気まずそうでありながら、どこか偉そうに見えるのは気のせいか?
友里に何を吹き込まれているかは知らないが、オイラを崇めているようには思えない。
うん、そんなことは決してない。
「オイラの尾行は、友里の命令か?」
「命令って言うか… 、指示っす」
「はあ?」
命令も指示も同じじゃないのか?
つくづく日本語は難しいと、オイラは首を傾げた。
「前村健太郎は山下の居所を知っているはずだから、結果が出るまで張り付くようにと、姐さんが」
松葉杖をつく学ラン姿の高校生を避け、オイラに近寄った鮎川は、ニッと白い歯を出した。
よく見ると、淡白な顔をしている。
この手の顔をした男は、内心何を考えているのかわかったもんじゃない。
気をつけねば。
「山下の居所なんて、知らないよ。
友里の奴、何を勘違いしてんだ?」
「けど、失踪する前夜、一緒に飲んだんしょ?」
「それが何だって言うんだよ」
どうしてだ?
オイラは突進してきた自転車の運転手に睨まれた。
顎のない、ムクミ顔のオバサン。
「危ない」 と文句が言いたいのはオイラだよ。
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